アメリカに胃袋を握られた日本
いまや日本の食料自給率は38%しかなく、先進国でも最低水準だ。しかも、農業に必要な肥料、種子などの多くを海外に依存しており、これらが入ってこなくなればたちまち国民の大半が飢え死にしてしまう。
なぜ日本は自国の農業を保護できないのか? その背景には、アメリカの圧力があると鈴木教授は指摘する。
〈筆者は1982年に農水省の国際部に入省し、貿易自由化などの国際交渉に近い部署で仕事をしてきたので、アメリカとのせめぎ合いを間近で見てきた。農水省に15年ほど勤め、研究者に転じてからも貿易政策に関する研究を行い、自由貿易協定(FTA。日韓、日中韓、日モンゴル、日チリ)の事前交渉にあたる産官学共同研究会には学界の代表として参画している。また、2011年以降は東大教授としての立場で、TPP(環太平洋パートナーシップ)交渉にも深く関わっている。貿易自由化や食の安全基準をめぐって数多くの要求を突きつけるアメリカの強引な振る舞いは実際に経験してきたことだ。
日本の政府関係者は、私が国内農家への「援助」という言葉を口にするだけで震え上がり「その話はやめてくれ」と懇願する。そんな場面は何度かあった。「アメリカの市場を奪う」と受け止められ、万が一、アメリカ政府の逆鱗に触れれば、自分の地位が危うくなるとの恐れを抱くからだ〉
では、アメリカはどのようにして日本人の胃袋を握っていったのか?――3月10日発売の「文藝春秋」(4月号)では、鈴木教授の論文「日本の食が危ない!」を30ページにわたり一挙掲載。日本が近い将来、深刻な飢餓に陥るリスクがあることなどを指摘したうえで、食料自給率を上げるための未来図を示している(「文藝春秋 電子版」では3月9日に公開)。
日本の食が危ない!