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熱量に心を打たれた

 関氏には様々な企業からオファーがあったものの、提示されたポジションがなかなか2つの条件とマッチせずに悩んでいた。そんな時、鴻海からEV事業の話が舞い込んだという。

「最初にコンタクトがあったのが昨年の10月末でしたが、非常に積極的で、あっという間に話が進んだ。1週間後には『ぜひ台湾に来てみてくれ』と、本社に招かれました。本社ではEV事業について、どんな計画があって、現時点でどこまで進んでいるのか、包み隠さず説明を受けた。劉揚偉会長も直接、自身のビジョンや夢を語ってくれ、私の目を見て『一緒にやろうよ』と……その熱量に心を打たれました。

 他社からのお誘いも同時並行で進んでいたため、そこでは『少し考えさせてください』と返事をしたものの、やはりEV事業の話が頭から離れることはなかった。最終的に、お引き受けすることになりました」

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2022年に披露された「モデルC」 ©時事通信社

19億人が買えるEVをつくる

 鴻海はスマホを中心とする電子機器の受託製造サービスで大きな成長を遂げてきたが、今後注力していくのがEV事業だ。2025年に世界シェア5%を目標に掲げている。

 まさにEV市場に「攻め」こんでいくわけだが、どのような戦略を描いているのか。

「EVに苦手意識を持つ人は依然として多い。その理由は『高価』ということに尽きます。EVはいまだに、富裕層が持つ贅沢品としての側面が強いのです。

 そこで鴻海が目指すのは、人口に膾炙する大衆的なEVです。

 縦軸が所得の高さを表す、富士山型の人口ピラミッドを想像してください。世界の総人口80億人のうち、車を購入できる層は8合目以上の20億人。そのうちEVを買えるのは、頂上のわずか1億人だけです。そこで鴻海が攻めていくのは、車は買えるけどEVには手が届かない、19億人の部分です。安価なEVを生産することでEV購入のスレショルド(ボーダーライン)を下げていく。それが我々の使命であると考えています」(関氏)

 関氏は今回のインタビューのなかで、鴻海の強さが「走りながら考える」意思決定の速さにあることや、EV開発のためのプラットフォーム「MIH」の狙いを明かした。その言葉の端々からは、自動車業界の未来予想図が見えてくる。

EVのオープンプラットフォーム「MIH」 ©共同通信社

 関氏のインタビュー「さらば日本電産!私は台湾で戦う」全文は、「文藝春秋」2023年4月号(3月10日発売)に掲載されている(「文藝春秋 電子版」では3月9日に公開)。

文藝春秋

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「さらば日本電産! 私は台湾で戦う」