日本プロ野球の審判員として29年、通算2414試合を裁いた佐々木昌信氏。同氏が実際に見てきた、球場内での各選手の凄みとは……。

 ここでは、同氏の著書『プロ野球 元審判は知っている』(ワニブックス)から一部を抜粋。審判員だからこそ知り得た、ダルビッシュ有のピッチングの凄み、大谷翔平が垣間見せた人間性について紹介する。(全2回の1回目/2回目へ続く)

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鉛の球を投げるダルビッシュ有

 セ・リーグとパ・リーグの審判部が統合されたのが2011年。それ以前から「球審として直接投球を見てみたい」と気になる存在がダルビッシュ有投手でした。

©文藝春秋

 プロ入り2年目の06年から6年連続2ケタ勝利、07年から5年連続防御率1点台。何より毎年10個近くの「貯金」をつくる圧倒的なピッチングを展開していました。私は07年日本シリーズの日本ハム―中日戦に審判として出場し、ダルビッシュ投手のすごさを知っていました。

 ダルビッシュ投手は日本最後の10年・11年しか球審として見ていませんが、その2シーズンは連続して「最多奪三振」のタイトル獲得。10年は「最優秀防御率」だし、11年は18勝。最高潮の2年でした。

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「変化球はアートだ」と自ら口にするくらい多彩で、11種類あるともいわれる変化球すべてが力強かった印象。空振りを取るためのフォークもキレというより球威がある。まるで鉛の球を使って投げているようなイメージ。当然、打っても打球がドン詰まりしそうなフォークを投げていた唯一のピッチャーです。