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変な場面でベテラン審判になったことを実感
私が審判駆け出しのときと野球は変わっていますが、当時は「野次るのが仕事」「声出しが戦力」といった選手やコーチ、いわゆる「野次将軍」がたくさんいました。ダグアウトの首脳陣に対してアピールするにしても元気に声を出すだけでは高が知れている。審判を野次るのが一番簡単なわけです。
だからそういう意味では私が若いころはそうとう野次られました。とにかく「ストライク」と言えば野次る、「ボール」と言えば野次る。ハーフスイングと判定すれば野次る。もう大変でした。〇木選手、金〇選手、平〇選手、〇野コーチ、〇上コーチ……。(広島は伝統的に無意味な野次がない紳士な球団です)
周囲の選手には「気にしすぎですよ」と言われますが、毎日グラウンドに立って野次られていると、被害妄想が強くなります(苦笑)。それがいつのころからでしょう。
「誰だ、いまの汚い野次は!」
そんな表情でダグアウトをにらみつけると、選手が一瞬沈黙するようになったんです。変なところで「ああ、オレもある程度の経験と年を重ねたんだな」と実感した次第です。
ビデオ検証「リクエスト制度」がもたらした功罪
メジャーリーグで2014年から導入された「チャレンジ制度」の日本版が、18 年から導入された「リクエスト制度」です。ボール、ストライク以外でNPBで決められた基準をもとにした判定について異議がある場合、ビデオ映像によるリプレー検証を、1試合に2度まで要求できます。
しかし、リクエスト制度を要求されるのは審判にとって恥なわけです。我々はジャッジすのが仕事なのに、自らでジャッジする機会を機械に奪われるわけですから。語弊があったらご容赦願いたいのですが、審判にとっては「公開処刑」の心境です。