バカリズムが30代女性のリアルを描ける理由
2019年に元でんぱ組.incの夢眠ねむと結婚したことを発表したバカリズム。夢眠ねむはアイドル活動をしていた当時から年齢非公開だが、でんぱ組.incに加入した2009年当時で18歳だと仮定すると、2023年現在は30代前半になる。同じく元でんぱ組.incの最上もがも同年代なので、可能性は高い。
だとすると『ブラッシュアップライフ』主人公・麻美の年齢とも近い計算になる。想像の域を出ないが、実際に当時を小学生として生きていた夢眠ねむに対し、平成初期カルチャーをリサーチする一環として話を聞いていた説が有力なのではないか。
30代のリアルを描いたバカリズム作品はほかにも…
「もしかしたらバカリズムは40代男性の皮をかぶった30代女性なのではないか?」と思えてしまう作品は、ほかにもある。映画『架空OL日記』(2020)と『ウェディング・ハイ』(2022)だ。
『架空OL日記』は、バカリズム自身が主演・脚本・原作を務めた作品。臼田あさ美、夏帆らが演じるOLたちに混じって、日々の他愛ない話に興じるバカリズムの姿は一瞬だけ奇妙に映る。しかし、見るうちにOLにしか見えなくなってくるから不思議だ。
この作品でも、バカリズムはOLたちの、ときに脈絡のない会話を忠実に再現している。休憩室での延長コードをめぐるやりとりなどは、見ていて思わずクスッとしてしまう。
バカリズムによる完全オリジナルストーリーが、大九明子監督によって映画化された作品『ウェディング・ハイ』も絶妙。中村倫也と関水渚が、結婚を控えた新婚夫婦役を演じ、その結婚式をプランナーとして取り仕切るのが、篠原涼子演じる中越である。
式は予定通りに進まず、ハプニングに次ぐハプニングで大幅に時間が押してしまうのだが、敏腕プランナーである中越がなんとか時間を巻いて調整する。その過程がなんともコミカルに表現されているのと同時に、未婚のアラサーである中越がプランナーとして新婚夫婦の世話を焼く悲哀が、なんともリアルに描かれている映画だ。
過去作を振り返ってみても、その脚本の秀逸さは確かなもの。『ブラッシュアップライフ』も放送前から期待値が高かったが、それを遥かに上回ってみせたバカリズムのセンスは、今後どんな高みまで迫るのだろうか。