2020年4月、福岡県篠栗町のマンションで碇利恵被告(41)の三男・翔士郎ちゃん(当時5)が餓死した事件。3月9日、保護責任者遺棄致死や詐欺などの罪に問われた“ママ友”・赤堀恵美子被告(50)の控訴審が福岡高裁であった。福岡高裁は懲役15年とした一審の判決を支持し、控訴を棄却した。

 一審に続き、碇被告への洗脳や、生活保護費を騙し取ったとされる一連の容疑を否認した赤堀被告。なぜ、翔士郎ちゃんは短い命を閉じなければならなかったのか。事件を報じた「週刊文春」の記事を公開する。(初出:週刊文春 2021年3月25日号 掲載 年齢・肩書き等は公開時のまま)

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 逮捕翌日の送検時。碇利恵は、痩せ細った姿を報道陣の前に晒し、虚ろな目で護送車に乗り込んだ。容疑を否認する“元ママ友”の赤堀恵美子が、布で顔を覆い隠していたのとは対照的に――。 

「子供の頃の利恵ちゃんは勝ち気で活発な女の子でしたよ。大人にも物怖じしないで意見を言うし、友達の先頭に立って遊んでいましたから。本当に驚きました」

中学時代の碇(卒業アルバムより)

 碇の少女時代を知る元近隣住民は、事件を聞いて耳を疑ったという。

 2020年4月、福岡県篠栗町で碇の三男だった5歳児の翔士郎ちゃんが餓死した事件。3月2日、碇と赤堀は保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。我が子の様子が急変した時でさえ、碇が連絡したのは119番ではなく、他人の赤堀だった。

 1981年、福岡県で生まれた碇。幼少期から10代を福岡市のベッドタウンの宇美町で過ごした。

「父が働いていた九州ローカルのスーパーマーケットの社宅アパートに両親、二つほど年の離れたお姉ちゃんの4人で住んでいてね。ところが利恵ちゃんが中2の頃、スーパーが閉店して、ひっそり引っ越していきました」(別の元近隣住民)

 碇家は同じ町内の住宅街に転居する。突如、訪れた家庭環境の変化。地元の公立中学に通う碇からは、幼い頃の溌剌さが消えていた。

「バレーボール部に所属し、普段は大人しい子たちのグループに交じっていました。ただ、誰かの言いなりになるような感じではなかったんですが……」(同級生)

 中学卒業後は、福岡市内にある男女共学の私立高校に進学。だが同時期に両親は離婚してしまう。高校の同級生が当時の印象を語る。

「口を開けば明るい、気さくな子でしたが、クラスの中では全く目立たないタイプでした。普通科ではなく就職科。部活はやっていなかったと思う。卒業後は地元のファミレスで働いているのを見かけましたね」

 その後、碇は自らの手で幸せを掴み取る。20代後半で結婚。夫は真面目でしっかり者の会社員だった。

 やがて夫婦は2人の男児に恵まれ、12年には篠栗町に新築のマイホームを3000万円のローンを組んで購入。町内では高級住宅地の約200平米の土地に構えた2階建ての一軒家だ。その2年後に誕生したのが三男の翔士郎ちゃんだった。

 家の庭にはブランコ付きの遊具が置かれ、夏場はビニールプールではしゃぐ兄弟たちの愉快げな声が響く。

「ご主人もいかにも優しそうな見た目で、本当に子煩悩な方でした」(近隣住民)

 だが――。16年4月、息子を通わせていた町立の幼稚園で、同じく3児の母だった赤堀と出会うのだ。