相続対策の新築物件を待ち受ける未来とは
相続対策という目の前に迫ったニーズを満たすためだけに業者や金融機関、税理士などの勧めにしたがって、多額のローンを組んだ上にアパートや賃貸マンションを建設してしまった結果、待ち受けるのはどんな未来なのだろうか。
たとえばアパート業者の多くが実施している賃料保証サービスでトラブルが多発している。アパートオーナーと業者の間では、通常、期間20年程度の建物賃貸借契約を結ぶ。その中で、賃料保証を謳うものが多いのだが、問題はその中身だ。当初の10年程度はたとえテナントが十分に集まらなくとも、業者は一定の賃料は必ず支払う旨の保証を行っている。
ところが問題は、一定期間経過後は、業者側の指示でリニューアルをオーナー側が行うことが条件になっているものが多いのである。外壁塗装や、空調設備や衛生設備などの更新など多額の費用負担を求められる。しかもこのリニューアルの施工については業者側に一任する内容で、オーナー側に選択の自由はない。もし業者側が満足する工事が行われなければ、以降の保証は解除する内容になっているのだ。
相続対策で受け取ったアパートなのに…
この時点になると、すでにアパートを建設したオーナーは亡くなり、相続人が受け継いでいる例も多い。相続するにあたって親と業者との間で取り交わされた契約内容を細かくチェックしていることは稀で、相続対策で受け取ったアパートを、いきなりリニューアルせよ、しないと今後賃料の保証はしない、などと迫られ途方に暮れることになる。
親がつきあっていて「いい人だよ」などと言っていたアパート業者の元気で明るい営業マンはすでに担当を外れて連絡つかず、多額のローンを組んでくれた銀行員はすでに転勤。対策を熱心に勧めてくれた地元税理士も、すでに相続は終了しているので、「いやいや、私は不動産のことについては門外漢でして」などと言って逃げ回る。
はじめのうちは瀟洒なアパートで人目をひき、テナントも順調に埋まっていたものが、築10年以上も経過すると、周囲に似たようなアパートが林立。しかも最新鋭アパートは部屋も広く内装もきれい。自分のところにいたテナントも近所の新築アパートに移っている。リニューアルを拒むと、業者は手のひらを返したように自分のアパートのテナントに声掛けして、近所で自社が新築したアパートに引き抜きをはじめる。
こうした仁義なき戦いが繰り広げられるのがアパート相続に待ち受ける未来だ。都市郊外などを歩くと、ひとつのエリアにたくさんのアパートがひしめいている光景に出くわす。多くが都市農家などで、農地を宅地化し、相続税対策を目的としてアパート建設を行ったものだ。ただ、中には空室が目立つものもあり、明らかに供給過剰であることがわかる。