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日本の空き家、実は半分が“賃貸用”…需要がなくなるアパート節税投資のワナ

2023/03/21
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一番困るのが、相続人である子供

 なぜそんなことになるのだろうか。これはもう金融機関の性としかいいようがない。ローンを組み立てたときの銀行員はとにかく目の前にあるノルマを達成したい思いでいっぱいだ。相続対策目的のアパート建設は多額のローンを組みやすいので担当者にとっては実績を上げる大きなチャンスなのだ。アパート業者も物件獲得ノルマを果たしたいのでアパート経営の夢ばかりを語って、肝心の運用リスクに対する説明は疎かになりがちである。それをよいことにバラ色の収支計画を作る。そしていざというときのために土地および新築されるアパートを担保に取っておけば転ぶことはなかろう、くらいで決裁してしまう。ましてや銀行員はたいてい3、4年程度で違う店に転勤になるはずだから、あとは知らない、になりがちだ。

 一番困るのが、実は相続人である子供たちだ。何せ当時、親の周りでさんざんにアパート投資を喧伝した関係者は今やどこにもいない。膨大な額のローンが残り、テナントがきちんと入居している、アパート業者がしっかり保証している間はまだしも、いきなり多額のリニューアル資金を出せだの、できなければ今後は保証しないなどの脅かしを受けるようになると大海に放り出された小舟のような気分になる。

 商品寿命の短いアパートに長期で多額のローンを組むのは考えものだ。多少節税効果が下がっても適正範囲でのローンを組むようにしないと、相続税対策をしたはずの親が、実はその対策のせいで子供が苦しむ、路頭に迷うといった不幸を作り出すことになるのである。

負動産地獄 その相続は重荷です (文春新書)

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牧野 知弘

文藝春秋

2023年2月17日 発売

日本の空き家、実は半分が“賃貸用”…需要がなくなるアパート節税投資のワナ

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