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結婚は「荒療治」だった

――失礼ですが、学生時代から浮気を重ねていたというエピソードからも、きのコさんが結婚を選ばれたのが不思議に思えたのですが、結婚の経緯は?

きのコ 18歳でポリアモリーを自覚してから、複数の人を好きになってしまう自分は病気だと思っていましたし、自殺を考えたこともあります。いつまでもこんな生活してたら皆から嫌われちゃうし、子どもがほしい気持ちも強かったので、子どもを育てる上でも、「こんな性欲が強いビッチな私は矯正しなくちゃいけないんだ」という強迫観念がありました。

 そこで27歳の時、最後の望みをかけ、荒療治的なかたちで結婚をしました。それでも“治る”ことはなかったんです。

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©深野未季/文藝春秋

――結婚・離婚を経て、自分らしくいられるスタイルを突きつめた結果、「ポリアモリー」にたどり着いたということだったんですね。

きのコ そもそも、特定の人とサスティナブルな浮気をしようと思うと、世界をもうひとつ創造するくらい力が必要だと思うんです。マルチバースですよね(笑)。嘘をつく罪悪感といった倫理的な部分もありますが、不倫や浮気って嘘のためのコストが馬鹿にならないので、そういった意味でも自分には向いてないと思いました。

 私はポリアモリーが正しいとか美しいって言いたいわけじゃなくて、自分自身が楽ちんだからポリアモリーをしてるんです。

――でも、自分の恋人が他の人とデートしていることを知ったらもやもやしませんか? それこそ嫉妬で常に修羅場状態になったり。

きのコ 私自身、独占欲は元々ないんですが、嫉妬はあります。それこそ来週告白したいと思っている人がいるんですけど、その彼は今、私の友達のCさんが気になっているのを知ってるから、Cさんに嫉妬してます(笑)。

――告白というのは、いまお付き合いしているMくん、Aちゃんの他に、新たに好きな人がいるということですよね?

きのコ そうです。恋愛相談も真っ先にパートナーのMくん、Aちゃんにしてます。言っちゃえば、私は自分がしたセックスの内容までパートナーに話したいし、相手が他の人とどんなセックスしてるかも知りたいです。

きのコさんとパートナーの「Mくん」 本人提供

――そこまでオープンなんですね。

きのコ 情報公開レベルは関係性それぞれだと思いますが、私はなんでも知りたがりだし、何なら嫉妬する自分をほじくってみたい気持ちもあったりして(笑)。でも、それはポリアモリーの本質とは限らないです。

 例えば自分にA・B・Cというパートナーがいて、Aさんにはフルオープンにしたいし向こうもそれを望んでるけど、Bさんは情報を求めていないからあまり言わないでおこう、といったかたちで、互いが心地よくいられる情報公開レベルを関係性ごとにすり合わせるものであって、ポリアモリーだったら全部フルオープンすべきっていうルールではないです。