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 東谷は大阪の私立阪南大学を卒業しているが、本人も「漫画はガキのころからの唯一続いている趣味」「漫画に育てられた」と語るように価値観や知識の多くは漫画由来であることが多い。彼の思考を探るには、影響を与えた漫画を分析するのが一つの正しいアプローチなのではないか、と感じた。

ガーシーの本棚

 ドバイでは紙の漫画本は入手できない。だから、いまは電子書籍で漫画を読んでいる。東谷がインスタグラムでスクリーンショットを公開した「俺のiPadに入っている漫画たち」の一覧がある。

ガーシーの本棚(画像:インスタグラムより)

 200以上ものタイトルが並んでいるが、目に付くのは不良、暴走族、ヤクザ、殺し屋、博徒など、いわゆるアンダーグラウンド系の漫画の多さだ。

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『湘南爆走族』『荒くれKNIGHT』『ドルフィン』『ギャングキング』『クローズ』『クローバー』『WORST』『バウンサー』『虹丸組』『バウンスアウト』『キューピー』『ドロップ』『ビー・バップ・ハイスクール』『サンクチュアリ』『HEAT—灼熱—』『代紋TAKE2』『ドンケツ』『殺し屋イチ』『ザ・ファブル』『カイジ』……挙げたらキリがない。

 参院選の前後で東谷が口にした印象的な言葉がある。

「カルロス・ゴーンの本とか、犯罪を犯した逃亡者の本が売れるわけじゃないですか。今の人々は『嘘の正義より真実の悪』を求めている面はあろうと思いますよ」(2022年5月30日のオンライン出馬会見)

「自分のこと悪党だと思っているんですよ。『悪党にしか裁けない悪』は絶対にある。警察や弁護士やまともな人では対応できないね」(2022年8月19日、NewsPicksでの経済学者成田悠輔とのオンライン対談)

 雑誌では週刊少年ジャンプとヤングジャンプは電子版でかかさずに定期購読している。なかでも何度もインスタライブなどの配信で言及しているのが尾田栄一郎の人気漫画『ワンピース』だ。

 言わずと知れた、悪魔の実を食べた少年ルフィが海賊王をめざし、仲間たちと海賊団「麦わら一味」を組んで繰り広げる冒険活劇。単行本はすでに104巻(2022年12月現在)を数え、発行部数は全世界で累計発行部数が5億部を超えた。週刊少年ジャンプに連載中の物語は佳境に入っている。

海賊王を目指す少年ルフィ像 ©時事通信社

 私は初期のころの『ワンピース』しか読んだことがなかったが、東谷の取材には欠かせないと判断し、今回最初から最新刊までを読んでみた。幅広い年齢層から支持される大ヒット作だが、「悪党」を自認する東谷の視点から見ると、ハッとさせられるいくつかのポイントがあることに気づく。