「あんな詐欺師にお金を貸してどうするんですか」……周囲の仲間からは、強く反対されたにもかかわらず、ガーシー氏(本名・東谷義和)に4000万円の大金を貸し付けたのが、美容外科医の麻生泰氏だ。
医師で実業家の麻生氏はなぜガーシー氏と接点を持ったのか? そして彼が信じるガーシー氏の可能性とは? 朝日新聞ドバイ支局長としてガーシー一味に接し、1000時間に及ぶ密着取材を続けた伊藤喜之氏の新刊『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
◆◆◆
悩めるガーシーを救った男
「思ったよりも早く(BTS詐欺の件で)被害者に弁済できることになりそうです。弁済資金を貸し付けてくれるという支援者が現れたんで」
2022年4月中旬、東谷からメッセージアプリでそんな連絡が入った。
ガーシーCHの収益化は早くとも5月下旬以降という話だった。もし貸付が実現すれば、約1ヵ月前倒しできることになる。
4月21日、東谷がその支援者とともに生配信をするというので私は東谷のアパートメントに向かった。少し早めに到着したが、玄関の呼び鈴が鳴り、間もなくスキンヘッドの大柄な男性が入ってきた。漫画ドラゴンボールに登場するキャラクター、ナッパのような風体。上下ベージュのジャケットスタイル。ひと目見て、YouTubeで見覚えがある人だとわかった
麻生泰(あそう・とおる)。大阪府出身の50歳。
東京美容外科の統括院長で、日本各地に整形外科や発毛専門クリニックなど100院以上を展開し、グループの年商は約200億円にのぼる。ちなみに麻生太郎元首相の実弟で九州経済連合会名誉会長も務める麻生セメント(本社・福岡市)の会長、麻生泰(ゆたか)とはまったくの別人で縁戚関係にもない。
本業の傍ら、「ドクターA(麻生泰)」というYouTubeチャンネルを持つ。麻生が得意とする豊胸手術などの様子を紹介するほか、趣味のヴァイオリン演奏やウェイクサーフィンなどの様子を配信するなどして一定の視聴者を獲得していた。息子の拓海は「お金持ちの息子」として人気のティックトッカーでもある。