エンゼルス広報が評価するワケ
エンゼルスの広報を務めるグレース・マクナミー氏は試合の後であっても練習をする大谷選手に野球愛の強さを見ていた。そして、野球愛ゆえに、ひたすら練習を重ねる大谷選手に、在米の日系人たちは“ハードワーク”という日本のスピリットを見出している。しかし、大谷選手には日本のスピリットを超越したものが感じられる。
筆者には、かつてロサンゼルス・ドジャーズでプレイしていた野茂投手にロッカールームで取材していた時期があるが、同氏はあまりにも近寄り難い遠い存在だった。イチロー選手も同様だ。MLBで日本人選手が活躍する素地を作った両選手はクールな存在で、それがアメリカの人々を魅了もしていたが、ある種の壁のようなものが感じられた。しかし、大谷選手にはそれが感じられない。アメリカ人選手たちのように明るく、よく笑い、フレンドリーだ。
「オオタニは尖ったイチローと正反対だ」の真意
前述の「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙が「大谷選手はイチロー選手とは正反対だ。彼(イチロー)は尖った勢いがあった。日本の“出る杭は打たれる”という格言はイチロー選手のことを表している」と述べているが、大谷選手はそのパーソナリティーゆえに出る杭になっていない、あるいは、出る杭になっても打たれないと言いたいのだろう。
日本は世界に対して様々な壁を作っている。日本市場は参入するには規制が多い国として有名だ。アジア諸国の中でもあまりフレンドリーな国としては見られていない。世界にそんな印象を与える日本からきた選手らしからぬ大谷選手に、アメリカの人々は違いや新しさ、そして驚きを見出しているのではないか。
日本のスピリットを堅持しつつも、アメリカに、世界に自然に溶け込んでいる大谷選手は、確実に日本を牽引する大きな力になっている。