ギャンブルの借金のために同世代へ詐欺を働いていた
人生100年時代のスローガンは聞き飽きたが、それでも84歳といえば隠居の身が普通だろう。田中容疑者が流行りの詐欺事件、それも若者世代が請け負うような末端の「受け子」に成り下がったのはなぜか。
「『ギャンブルで借金があった』と話す田中容疑者は競馬予想で使っていたというメッセンジャーアプリで何者かに受け子のバイトを紹介され、大阪の他にも群馬などの関東や北海道にまで移動して約10件の犯行に関与しているとのことです。だまし取った現金はコインロッカーに入れて、銀行振り込みで数十万円の報酬を受け取っていました」(同前)
80歳を超えて、金のために面と向かって同世代の高齢者をだましていた田中容疑者。被害者もまさか自分と同世代の人間が詐欺師だとは露にも思わなかっただろう。自宅のある宇都宮市の郊外を訪ねると、想像とは異なる人物像が浮かび上がった。
近所の人は「もう本当に信じられない思いです」
「30年40年、お互いこのあたりに住んでますからねえ。親しいわけではないですけど、すれ違えば話もしますよ。でも今、田中さんは千葉だかどこかに介護の関係で行っているみたいで、しばらく見ていないですね。ご高齢ですが、とてもしっかりした方ですよ」
近隣の高齢女性はこう証言する。「ご高齢なのに介護に行っているのか」と記者が尋ねると「確かに、おかしいわね。介護されに行っているのかしらね」といささか会話が食い違う。
「田中さんは、引退後にも町内会でも役員をしてくれてね。地域のことを考えて、公園の整備をしてくれたりいろいろとやってくれました。しばらく見かけないけど、家を空けてどこかに行っていると聞きましたね。奥さんはいらっしゃるけど。昔も家をあけて貸していたこともありましたから」(別の近隣住民)
近隣でも事件について知らない人が多いようだ。田中容疑者が詐欺事件の受け子として逮捕されていることについて知っている住民からも話を聞くことができた。
「もう本当に信じられない思いです。おしゃべり好きのどこにでもいる感じの良いおじいちゃんです。細身でね。とても元気で80歳を超えても、脚立に乗って背の高い木の剪定をしていましたからね。お仕事も、引退後にも正規社員ではないにせよ、ちょくちょくやっていたようです。とにかく年齢の割にとても元気なんです。最初、事件のことを聞いたときには別人じゃないかなって思いました」