客の中には一晩で1000万円を担当ホストに貢ぐホス狂いや、障害年金を注ぎ込む女性も……。儲けの仕組みや、客層など「ホストクラブの知られざる実態」を新刊『ルポ歌舞伎町』より一部抜粋してお届け。
2019年に歌舞伎町のヤクザマンションへと居を移し、歌舞伎町に入り浸ったルポライター・國友公司氏がそこで見たものとは?(全2回の1回目/後編を読む)
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歌舞伎町ほど金の動きがまざまざとわかる街はない。下半身がパツンパツンに張り詰めた男たちは風俗店に金を落とし、風俗嬢たちは毎晩のようにホストクラブに万札を垂れ流す。
そして彼女たちに寄生するようにスカウトたちはこぼれ汁をすする。歌舞伎町における金の流れは、よく「食物連鎖」と揶揄される。
冬のボーナスを手に入れたサラリーマンは、妻に内緒で歌舞伎町のソープランドを訪れた。ソープ嬢の若い身体を貪り、何事もなかったかのように家に帰った。射精したサラリーマンはそのソープ嬢の背後に広がる世界など考えもしないだろうが、そこは実にいびつな関係で埋め尽くされている。
「裏稼業の人間たち」と麻雀を打ってみると…
歌舞伎町の雀荘「L」では、連日のように裏稼業の人間たち――ホスト、スカウト、特殊詐欺グループのメンバー、闇金業者などが賭け麻雀に興じている。
私の麻雀の腕はというと、役は「タンヤオ」しか知らないし、「ポン」と「チー」の違いもわからない。そんな状態で裏稼業の人間たちと麻雀を打つなど、ニッカポッカ姿でウォール街に乗り込むようなものなので、することといえばもっぱら店主やその友人とのおしゃべりである。空いている麻雀卓を勝手に使ってしまっているが、店主はソファで寝ているので問題ないだろう。
歌舞伎町でホストクラブを経営する田口もまた、Lに入り浸る男のひとりだ。まず大前提として、ホストクラブに通う女の子たちの9割以上が風俗嬢であり、彼女たちはホストクラブに通うために風俗で働いている。風俗で働き、大金を稼いだ結果としてホストクラブに通っているわけではなく、あくまでホストクラブありきである。つまり、ホストクラブがなくなれば、彼女たちは店へ出勤しない。それは、田口の店も例外ではない。
「僕の店も少なくとも9割、10割に近いほど客は風俗嬢です。その9割の客にキャバ嬢は入らないんですよ。僕は、キャバ嬢はホストの商売相手にはならないと思っています。風俗嬢とキャバ嬢はメンタルが違うんですよ」