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 私も風俗嬢への取材当日2時間前に、「実は昨日から入院していました」とドタキャンされたことがある。バレないと思っているのかおちょくっているのかしらないが、信じられないような嘘を平気でつくというのは風俗嬢を象徴する生態のひとつである。

パフェ屋で見たホス狂いたち

 2019年の夏頃だったろうか。歌舞伎町のホスト街にあるビルの3階に深夜営業のパフェ屋がオープンした。私はヤクザマンションのベランダからラブホテル街を通るカップルを眺めては、「あれは不倫か」「これはデリヘルか」と考えながら暇を潰していた。目の前の駐車場では大学生らしき女がまた嘔吐している。

 どうにも眠れる気分ではないので、私はその深夜営業のパフェ屋に行ってみることにした。深夜2時過ぎ、店内に入ると、カウンターには疲れ切った顔をした女たちが座っていた。左手にスマホを持ちながら、右手でパフェをつまらなそうにかき回している。2人組が3つで女は計6人。彼女たちの会話を聞きながら私もパフェをかき回していたのだが、内容からするに男がひとりで来るような店ではまったくなく、冷や汗が出てきた。

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「もう1時間も経つのにぜんぜん連絡来ないよ〜」
「私も……。ナツミはすぐに呼ばれたのにね」

 彼女たちは下を向きながらスマホを何度も何度も確認する。ネイルチップで画面を叩く音がどうも気に障る。

「あ、連絡来た!」

 ひとりの女の顔がパッと明るくなり、一緒に来ていた友人(?)の存在などなかったかのように駆け足で店を出て行った。残された女はさらに顔が暗くなる。そしてまたひとり、ポツリポツリと減っていき、客は2人だけになった。2人は違うグループのようで、会話は一切なく、ネイルチップでスマホを叩く音だけが店内に響いている。

 ホストクラブには、店の営業が終了した後に担当ホストとの時間を外で過ごせる「アフター」というシステムがあるが、彼女たちはアフター待ちのホス狂いである。ただ、人気ホストともなると1日に指名が複数入り、退勤後のアフターも数本こなさなければいけない。

 営業終了後はミーティングがあるホストクラブも多い。深夜一時以降は法律上、客を店内にいさせることはできないのでアフター待ちの女たちは一旦外に出され、担当ホストからの連絡を待つことになる。

 外で待っている女にとって担当ホストは一途な恋の相手であるが、ホストにとっては数ある客のひとりだ。ミーティング後、疲れ切って店内で寝ていたり1本目のアフターでラブホテルに入ってしまい2本目のアフターをすっぽかしたりするのは普通のことだ。

 担当ホストに後回しにされてしまった女は朝までパフェをかき回し、始発で帰るかもしくは朝から風俗店に出勤する。最後までパフェ屋に残っていた女の表情を見ると、私まで切ない気持ちになってきた。