2019年には1000万近くに迫った中国人観光客――中には“日本人の女性を買いにきた”という人たちも。当時の「夜の爆買い事情」を目の当たりにした日本人女性の証言を、ルポライターの國友公司氏の新刊『ルポ歌舞伎町』より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/#1、#3を読む)
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風俗業界に暗躍する中国人セックスブローカー
都内の高級デリヘルで働いていたアユのもとに、ある日、ひとりの中国人男性が客として訪れた。中国人観光客による「爆買い」が世間に定着した2015年のことだ。
「日本に来た中国人観光客に、日本の女を派遣してる。デリヘルで働くよりもっとお金、稼げる。女の子を紹介してくれたら、あなたに紹介料払う」
高級デリヘル詐欺という食い扶持を失っていたアユは、迷うことなく中国人セックスブローカー一味に加わった。さらに、別の中国人にも声をかけられ、2つの中国人セックスブローカー一味を掛け持ちした。
2013年の訪日中国人の数は約130万人。2015年は一気に増えて、約500万人。2019年には1000万人近くにまで迫った。それだけ多くの中国人が日本に来ていれば、性を爆買いする男もいるに決まっている。
アユによれば、高級デリヘル・パパ活界隈の女たちにとって、この訪日中国人たちは大きな金脈となり、またその金脈を彼女たち自身が育て上げていったという。
中国人案件だけで最高月収は200万円
「明日の20時から2時間、リッツカールトン行けますか?」と、中国人ブローカー(以下、ブローカー)から「WeChat」でメッセージが来る。自分が行く場合は8万円、別の女の子を紹介する場合は手取りの20%、1万6000円がアユの取り分となる。
「箱根1泊2日で30万円」などの大型案件の場合、紹介料は10%に下がるが、泊まりの案件は団体客であることも多い。5対5の案件の場合、4人は紹介して自分も箱根に行ってしまえば、30万円+紹介料12万円で、一晩で42万円もの稼ぎになる。
ブローカーとは案件ごとに毎回直接会うことになっている。その際に報酬を受け取り、ドライバーである別の中国人男性の運転でホテルへと向かう。紹介料のみの場合は、後日ブローカーのもとへ取りに行く。
客の支払いは「Alipay」「WeChatPay」などを使い、ブローカーとの間ですでに済んでいるため、その額を女の子が知ることはない。いくらブローカーに抜かれているかは検討がつかないというが、その点を差し引いても女の子にとってはオイシイ仕事である。
「中国人案件だけでいうと、片手間にやって最高で月に200万円。紹介料だけでも少ないときで月に20万円くらいもらえます」