歌舞伎町を訪れると、時折見かける「黒人キャッチ」……彼らはいったい何のビジネスをしているのか? 歌舞伎町を根城にする理由や、扱う商品について、2019年に歌舞伎町のヤクザマンションへと居を移したルポライターの國友公司氏が直撃。新刊『ルポ歌舞伎町』より一部抜粋してお届けする。(全3回の1回目/#2、#3を読む)
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ある歌舞伎町の黒人
歌舞伎町の路上で黒人のキャッチに声をかけても「ブラザー」と握手を求められ、「今日はナニするの?」とキャッチ行為をされるだけで、込み入った質問をすれば「日本語ワカラナイネ」とすぐにはぐらかされる。
キャッチについていっても、酒を飲まされ女を勧められ、運が悪ければぼったくられるだけである。しかし「こんな人に会いたい」と考え続けていると、その人は巡り合わせのように突然目のまえにやってくる。1年以上は顔を合わせていない知人の女性から突然連絡がきた。
「バーをオープンすることになったの。よかったら来ない?」
そのバーの経営者はナイジェリア人のイブラヒムという男で、知人は開店準備の手伝いをしているという。
少し怯えながら始まったイブラヒムとの付き合い
イブラヒムは日本国籍の女性と結婚し、すでに20年以上を日本で暮らし、日本語も流暢である。そして聞いてみれば歌舞伎町の路上にいた時期も長く、今でも歌舞伎町に出入りをしては困っている同胞たちを語学力と知識と人脈でバックアップする仕事もしているという。
私は関東某所にある開店準備真っただ中のイブラヒムの店へ足を伸ばした。しかし、関東の片田舎に顔も知らぬ歌舞伎町の黒人にひとりで会いに行くというのは、その場に知人がいるとはいえ若干の不安がある。
その知人というのも人を信用しやすく少し騙されやすい部分がある。1年前に会ったときも終始「私、騙されているかもしれない」という相談であったが、聞く限りでは宗教関連の人たちに騙されていたと思う。
少し怯えながらもイブラヒムとの付き合いが始まった。それにより完全にとまでは言えないが、歌舞伎町の黒人に対して抱いていた疑問の多くが解決されることになった。なお、イブラヒムは自分たち黒人のことを「ブラック」と呼ぶが、あえてそのままの表記にしてある。