「客の9割が風俗嬢」と言われるホスト業界。この来店客の“偏り”はいかにして生まれるのか? ホストクラブに通う女性ほど「風俗落ち」しやすい理由を、ルポライターの國友公司氏による新刊『ルポ歌舞伎町』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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スカウトと結託するホスト
ホストクラブにおける本指名は「永久指名」であり、そのホストが店を辞めない限り客は担当ホストを変えることができない。また業界の掟として、客が飛んだ場合、未精算の売掛金(ツケ)はすべて担当ホストの負担となる。
事前に借用書などを作成しておき法律に基づいて取り立てるホストもいれば、実家を押さえておき親に直接アプローチするホスト、取り立てる労力を考慮して自腹を切るホストもいる。
大金を稼ぐためには売掛をさせることが前提となってくるためホストクラブで働くこと自体がリスキーであるわけだが、売掛金まで店が面倒を見ることになると商売として成り立たない。
仮に売掛金まで店の責任となるのであれば、ホストは可能な限り売掛をさせたうえで回収に本腰を入れることなどまずないだろう。最悪、ホストだって飛んでしまえばいい。売掛というシステムがある限り、その責任をホストが持つことは当然とも言える。
そのぶん店は寮費や宣伝広告費など、ほかの面でホストたちの面倒を見ている。さらには新人ホストが生活苦に陥らないよう、最低保証をつけている店がほとんどである。
歌舞伎町でホストクラブを経営する田口の店では出勤さえすれば1日あたり7000円の日当が出る。週1日の休みで月に25日間出勤すれば、最低でも17万5000円の月給になる。すでに担当ホストが決まっている客に対し、別のホストが親密になったり連絡先を交換したりすることは客の取り合いによるトラブルを防ぐためにタブーとなっている。しかし、あくまで暗黙のルールであり、金脈を目の前にすればホストたちは臨機応変に対応する。
繰り返しになるがホストクラブの客の9割は風俗嬢であり、残りの1割に労力を注ぎ込むことは非効率だ。だが、風俗の世界に踏み込もうとしている女性が目の前にいるならば、話は変わる。