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「ヤクザに金は払ってないよ」

――インターナショナルクラブや黒人のキャッチにヤクザのケツ持ちはいますか。

イブラヒム どちらもヤクザに金は払ってないよ。自分たちだけでやってる。ブラックが扱う麻薬のルートに日本のヤクザが関わっていることもあれば関わっていないこともある。でも、ストリートで麻薬を売っているブラックが場所代をヤクザに払っていることはないね。俺たちは生まれたときから何かにビビるとかないから。常に生きるか死ぬかのサバイバルだから。ヤクザだから頭を下げる、金を払うとかはないね。

 ヤクザはヤクザ、ブラックはブラックでしょ。昔からヤクザは俺たちに「歌舞伎町から出ていけ」と言ってくるし、大きい喧嘩にもなってるね。警察も俺たちに「黙って出て行ったほうが安全だ」と言うけど、俺たちは出て行かないよ。

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黒人たちが「歌舞伎町」を拠点にするワケ

――彼らは母国を出るときからすでに、歌舞伎町を目指して日本に来るのですか。

イブラヒム それはないね。アフリカから日本を見たときに、歌舞伎町という街があることすらわからないね。日本にいるブラックの中で、歌舞伎町にいる人間はごく一部ね(日本で暮らすアフリカ人は、2018年6月末時点で1万6304人いる)。渋谷、六本木ふくめても繁華街でキャッチしているブラックはごく一部ね。日本に住んでいるブラックはもっともっといっぱいいるよ。

――イブラヒムはどのタイミングで歌舞伎町に来たのですか。

イブラヒム 俺は日本に来て2週間後に歌舞伎町を知ったね。はじめは練馬にいたから、池袋・六本木・渋谷・歌舞伎町、とりあえず行ってみるでしょ。歌舞伎町は面白いところだと思ったね。六本木と同じで外国人観光客多いじゃん。だから日本語が話せなくても歌舞伎町のキャッチならなんとかなるよね。簡単な仕事だからね。

――キャッチを始めるときに誰かに許可を取る必要はありますか。

イブラヒム そんなのひとつもいらないよ。日本人のルールとはまったく違うからね。だってみんな困って日本に来てるんでしょ。だからここは俺の場所とか、そんなルールを俺たちは作らないよ。紹介できる店を自分は探さなければいけないけど。

――六本木にも黒人のキャッチはいますが、彼らと歌舞伎町の黒人が繋がっていることはありますか。

イブラヒム 街ごとに繋がりを作っていることはないけど、国によって繋がりはできるね。同じ国同士の人間なら、街が違っても集まる。ナイジェリア、ガーナ、セネガル、ケニア、カメルーンはとても多いね。南アフリカ、ギニア、マリ、コンゴ、いろんな国のブラックがいるね。

――今日は歌舞伎町、明日は六本木と街を移動するキャッチはいますか。

イブラヒム それはないね。六本木の人間は六本木。歌舞伎町の人間は歌舞伎町。でも歌舞伎町を辞めて六本木に行く人もいれば、六本木を辞めて歌舞伎町に行く人もいるよ。日によって変えてはいけないというルールはないけど、ひとつの街に絞ったほうが効率的ね。ただそれだけね。
 

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。