1ページ目から読む
2/4ページ目

「風俗嬢だけに的を絞ったほうが効率的」

 風俗嬢という仕事は身体を売る前提で成り立っているが、キャバ嬢は枕営業があるとはいえ身体を売る前提ではない。基本的に風俗嬢よりもキャバ嬢のほうが自己肯定感は高く保たれ、ホストに貢ぐことによって承認欲求を満たすというような発想にはならないのだ。

 ホストクラブは一流店になればなるほど、昼間の世界で成功した女性が訪れるようになると田口は話すが、それもごく一部だ。「風俗嬢ではない」客が来た時点で、嘘をついているか、親が金持ちまたは政治家ではないかとホストは思う。

 自称社長の女性は疑ってかかる。ホストクラブで豪遊できるほどの金がある企業を経営しているのなら、そもそもホストクラブで暇を潰している余裕などない。横領でもしているんじゃないかと警戒するし、仮に横領しているとすればいつか「飛ぶ日」が来るため、風俗嬢でもない客が大金を使うことはホストにとっては恐怖なのだ。

ADVERTISEMENT

「なので残りの1割の客に労力を注ぎ込むくらいなら、風俗嬢だけに的を絞ったほうが圧倒的に効率がいいんですよね。そういったこともあって、客も風俗嬢だけに淘汰されていくんだと思うんです」

 厚底のブーツにマイメロのパーカーにMCMのリュック。この典型的なホス狂いファッションは、歌舞伎町を歩いていると、夜でも朝でも必ず目にする。そしてとなりには担当ホストと思わしき男がおり、アフター用の飲食店やラブホテルに入っていく。となりに担当ホストがいない場合は、声をかけてくる客引きやスカウトたちを、虫けらを見るような目で追い払いながら、担当ホストのいるホストクラブに猛進する。

深夜、歌舞伎町の路上で泣き崩れるホス狂いと気を失うホス狂い ©筆者撮影

 月に数百万はザラ、一晩で一千万を担当ホストに貢ぐホス狂いもいる。ホス狂い=メンヘラと言っても過言ではないが、ホストクラブには笑えないメンヘラも来店することがある。

「未成年は入れられないので初回の入店時には身分証明書を提示させてるんですけど、障害者手帳を持っている子もたまに来るんですよ。風俗でも働いているとは思うけど、国からも障害年金をもらっていると言っていますから」

 向精神薬をテーブルで飲み出すことなど日常茶飯事だ。デパスやヒルナミンを袋にパンパンに詰め、まるでラムネみたいに食べる風俗嬢を「もっと食えー」「それ美味しいの?」と煽る田口ですら、障害者手帳にはちょっとばかり引いてしまった。

エチゾラムとデパス(抗不安薬、睡眠導入剤) ©筆者撮影

 売掛の支払日にも風俗嬢たちはファンキーな本性をあらわにする。つい数日前まで「大丈夫、払えるよ」と言っていた女の子が、当日になると「財布を落としたので払えない」「今トラックに跳ねられて両足を骨折した」などと平気で言う。