野球の国・地域別対抗戦「WBC」(ワールド・ベースボール・クラシック)が盛り上がっています。このコラムが公開される3月21日には、準決勝となる日本対メキシコ戦が開催される。ここでは「メディアとWBC」について書いてみます。

 まず痛感するのはWBCのすがすがしさだ。現在、日本では東京五輪汚職事件をめぐる捜査の真っ最中。東京五輪では興行屋がスポーツの祭典を「興行」にして、アスリートたちの頑張りや人々の税金を食い物にしていた。その運営は、まさにインチキ臭さの祭典だった。

WBCはなぜ「すがすがしい」のか

©文藝春秋

 それに比べるとWBCは最初から興行であることを隠さない(メジャーリーグ機構と選手会が主催)。こう言っては何だが、最初から金儲けを目的としているからすがすがしい。「日本対アメリカ」だったはずの準決勝の組み合わせが突然変更されたのも、いかにもザ・興行っぽい話だ。それならこっちは「面白いか、面白くないか」で決めればよいだけ。メディアも乗りやすいのだと思う。

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 WBCの東京プールの主催には「読売新聞社」が入っていた。読売は日本代表の初戦の日には『WBC開幕 ぶつかり合う力と技を存分に』(3月9日)と社説でぶち上げていた。韓国戦の始球式には岸田首相が登場。これも読売が絡む興行と考えれば納得である。そういえば昨年11月に「専守防衛」の転換につながる提言をした政府の有識者会議には読売新聞グループ本社社長も参加していた。それを踏まえると、あの始球式は岸田首相と読売との“キャッチボール”だったのかもしれない。

 しかし岸田首相は大暴投。『開成野球部なのに…岸田首相WBC始球式ヘタレ投げでSNS大荒れ!栗山監督にサインまで貰う』(日刊ゲンダイ3月11日)

 これぞ異次元の始球式である。