「僕の作品を初めて映画だと認めてくれたのは韓国の観客たち」
2019年夏頃から日韓関係が悪化したせいで『天気の子』の公開が予定よりも遅れて10月に延期されたときも、わざわざ来韓して記者会見を開き、「僕の作品を初めて映画だと認めてくれたのは韓国の観客たち」と語って拍手喝采を浴びたこともあるほどなのだ。
もちろん、今回も『すずめの戸締まり』の公開に合わせて韓国を訪問し、記者会見や韓国ファンとふれあう舞台挨拶も実施。韓国の映画監督や映画評論家たちと作品について語るトークイベントを開催するなど、アイドル並みの人気を誇っている。トークイベントに参加した20代のファンは「巨匠なのにいつも笑顔でやさしく親近感がある。何よりも作品が素晴らしい。今回の『すずめの戸締まり』も新海監督がかけた魔法のような作品」と、その魅力に取りつかれてしまったようだ。
韓国の人々が新海作品に惹かれる“3つのポイント”
では、韓国の人々は新海作品のどこに惹かれているのだろうか。
ひとつは映像美と融合した音楽にあると言われている。「アニメの世界で光を描くことに長けた“光の魔術師”とされる新海監督が、九州、神戸、四国、東京など日本各地の風景を繊細に表現した。その映像美と新海作品には欠かせないRADWIMPSの音楽が、20代の観客たちを大いに満足させている」としたのはエンターテインメント・メディア「OSEN」の作品評だが、映画マニアたちが集まるネット・コミュニティにも賛辞が絶えない。
「光や色使いなど演出が素晴らしい。その映像美を見るだけで劇場に足を運ぶ価値がある」
「映像美と音楽が良い。本当に久しぶりに泣いた」
「さり気ない背景すらも美しく見逃してしまった部分もある。また劇場に行こう」
さらに、そんな映像美と音楽をうまく融合させながら、メッセージ性のある物語を描いていることも新海作品の魅力だという。近年の新海作品は自然災害を風化させずに前向きに生きる物語であることが共通し、『すずめの戸締まり』も2011年東日本大震災をモチーフに作られているが、「OSEN」などは「今回も韓国の30代~40代の観客たちは新海誠が伝えようとする温かいメッセージに共感している」と、『すずめの戸締まり』のヒットの要因を分析している。