「いまの父親や母親は自分の子どもにも『こうしなさい』『こう生きるべきだ』なんて押し付けがましいことを言えません。そこに登場したのがこの本です。
主人公のコペル君とおじさんのように、親子という上下の関係性ではなく、例えば、おじ、おばという斜めの関係性だと素直に耳を傾けられる経験は誰しも心当たりがあるでしょう。そう考えると、この本自体が『おじさん』のような斜めの存在になっているような気がします」(池上彰氏)
『君たちはどう生きるか』の勢いが止まらない。
昨年8月、マガジンハウスから漫画版と新装版が出されると、現在までそれぞれ版を重ね、170万部と40万部、累計210万部と爆発的な売れ行きをみせている。底本となった岩波文庫版もベストセラーランキング入りするなど、もはや一過性のブームを超えた社会現象と言ってもいいだろう。
原作は、戦前、岩波書店で日本初の新書<岩波新書>を立ち上げ、戦後は雑誌「世界」の編集長として活躍した吉野源三郎が、1937年に子ども向けに書いた物語だ。
その本がなぜ80年後のいま、ベストセラーになっているのか。
その理由と作品の時代背景について、小学生時代からの愛読者だというジャーナリストの池上氏と、著者の長男である吉野源太郎氏が初めて語りあった。
2人の対談は、小学校で2018年度から始まる「道徳」の正式教科化や英語やプログラミングの必修化を決めた文部科学省への考察、さらに新作長編アニメのタイトルを『君たちはどう生きるか』にすると発表した宮崎駿監督が、対面した吉野氏に感じさせた「思い」にも発展した。
ベストセラーを深く読み解いた両氏の対談「父・吉野源三郎の教え」は、2月10日発売の『文藝春秋』3月号に掲載される。
【文藝春秋 目次】<第158回芥川賞発表 受賞作全文掲載>石井遊佳 若竹千佐子/<総力特集>日本の教育を建て直せ/南北統一五輪は欺瞞だ
2018年3月号
2018年2月10日 発売
特別定価980円(税込)