文春オンライン
文春野球コラム

元ドラゴンズ・英智が明かす「私が24年間、チームスタッフにTシャツをデザインし続けた理由」

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/04/13
note

 はじめまして、英智です。本名は蔵本英智です。1999年に中日ドラゴンズに入団、選手として14年、コーチとして10年務めてきました。現在は野球関連をはじめ、いろいろな場所でお仕事させていただいています。

 私は「英智Tシャツ」と銘打って自身のオリジナルTシャツを毎年ファンの方に向けて販売してきました。それはドラゴンズを離れた今でも、有難いことに継続して行わせて貰っています。

 幼い頃から体育と図工、美術だけはずっと好きだっただけあって、大人になってもデザインすることには自然と夢中になれています。

ADVERTISEMENT

 しかし、デザインが好きだからといって、いきなりファンの方へ向けて「英智Tシャツ」を販売し始めたわけではありませんでした。

©英智

 Tシャツのデザインを始めたきっかけは、チームを陰から支えてくださっているチームスタッフさんにプレゼントしたいという気持ちからでした。スタッフさんへ日頃の感謝の気持ちを私なりの形として届けたかったから、想いをデザインに載せたのです。

 とはいえ、こちらが勝手に作ったものなので、気に入ってもらえないかもしれないと最初は不安でした。ただ、不安だったとしても考えすぎず、まずは着てもらえれば光栄だ。そんな思いでTシャツを制作しました。

 Tシャツ着用のタイミングとしては、選手の練習をサポートしてくれた後にシャワーを浴びてスッキリした時とかかなぁ、なんてイメージしていました。実際にその姿を多く見掛けることができて、届けられて良かったと安心しました。そして嬉しい気持ちにもなりました。

Tシャツは感謝の気持ちを表す「英智スタイル」

 その後もTシャツのプレゼントは続けました。年月を重ねるにつれて、私にも次第に欲が出てきて、できることならビジターで訪れる遠征先でのホテル滞在時とか、ちょっとしたコンビニなどへの外出の際にでも着てもらえないかなぁ、と考えるようになっていきました。

 Tシャツを外出先で着てもらえるということは「これ、気に入ってますよ!」の何よりの表れだと思ったからです。

 ただ単にナゴヤドーム(バンテリンドーム)内で「手元にあるから着ようかな」の手軽さだけでなく、わざわざ遠征バッグに詰め込んでもらい、合わせるのはジャージではなくデニムなどの私服になるので、扱いは確実にワンランクアップしていると思うんです。

 これは私の勝手な解釈なのですが、私にとってそこは重要なポイントなのです。制作の段階からそうなることをイメージしていたので、実際にスタッフさんにその場面で遭遇した時は、声には出しませんでしたが、心の中では小さなガッツポーズをしていました。

 また、スタッフさんの中には勿体無いからと一度も着用せず、渡したTシャツを毎年ストックし続けてくださっている方も居られました。それはそれで嬉しい限りです。

 正直、良いデザインが生まれなくて配れなかった年もありましたが、ドラゴンズを離れるまでの24年間、何とか続けることができました。デザインしたTシャツを渡して感謝の気持ちを表すスタイルは、一つのツールとして確立した手応えみたいなものを感じられました。

 夢だったドラゴンズで長くお世話になれたからこそ実現できたことでもありますし、それは私にとって何にも代え難い喜びです。

 Tシャツで感謝を伝えるスタイルが定着していたこともあり、他の選手も同じようにしてスタッフさんへTシャツを届けていました。

 なかでも印象的だったのが、吉見(一起)さんの作ったアパレルメーカーの「J .CREW」をもじった「D-CREW」というデザインです。これには脱帽。「やられたぁ~」と思いました。

 陰で支えてくださってる皆さんは船で言うところの船員(CREW)。そして「J」じゃなくてドラゴンズの「D」!なんです。思いのこもったメッセージが伝わってきます。シンプルで良く考えられているデザインで、私の中では高評価です。

文春野球学校開講!