昨年、静岡の名門企業TOKAIで起こったクーデター騒動で社長の座を追われて取締役に降格されていた鴇田勝彦氏(77)。“品位を欠いた”経費の使い方を問題視され、取締役からの辞任も求められていたが、先月31日付で正式に辞任することになった。

“品位を欠いた”経費は約1100万円のぼると指摘されている。元キャリア官僚社長は、いったいどのように経費を使い込んだのか。

 業務とはとても関係があるとは思えない鴇田氏の経費の使い道を追った当時の記事を再公開する。(初出:2022年12月23日。肩書・年齢は当時のまま)

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 東証プライム上場企業で、半沢直樹もびっくりの“クーデター”が起きた。

 舞台となっているのは、プロパンガスやケーブルテレビ事業で知られる静岡の名門企業・TOKAIホールディングス。今年9月の取締役会で、当時社長だった鴇田(ときた)勝彦氏(77)が突如として取締役の全員一致で解任されたのだ。それから3カ月後の12月15日、社内外の関係者からの聞き取りをベースに、同社は182ページにのぼる調査報告書を開示し鴇田氏の「不正経費」を公表した。

TOKAIホールディングス本社 Ⓒ文藝春秋

タワマン、高級車、混浴…堕落しきった所業の数々

 報告書には“不正”の実態が記述されている。会社の名義で購入した静岡駅近くの指折りの高級タワマンをプライベートで使ったり、ベンツ、センチュリー、アルファードといった高級車を社用車扱いで乗り回すなどなど、典型的で陳腐な経費の不正流用が窺える。さらには長野・蓼科にある会社のゲストハウスで女性コンパニオンと44回の混浴を楽しんだなど、昨今のコンプライアンス意識の高まりからは到底考え難い、堕落しきった所業の数々も報告されている。

 報告書は鴇田氏が「不正が疑われる経費」として、これまでに1110万円以上使用した可能性があると結論付けている。鴇田氏とはどのような人物なのか。全国紙記者が解説する。

「鴇田氏は開成中・高、東大法学部を卒業して通産省(当時)に入省した元キャリア官僚で、在職時には京都府副知事や中小企業庁長官も経験した、まさに絵に描いたエリートです。TOKAIホールディングスでは2011年の就任から解任に至る今年9月まで、11年間社長に君臨し続ける長期政権を築いていました」

取締役に降格になった鴇田勝彦前社長(TOKAIホールディングスHPより)

 これまた典型的な天下り社長だった鴇田氏。その上、任期中の経営手腕が評価されていたわけでは必ずしもないという。

「2021年に発覚した会社の不祥事を受け、幹部らの役員報酬が直近で0~2000万円にカットされていた時期にも、鴇田氏だけは1億2000万円の高額報酬を受け取り続けました。その額は、全役員報酬のうち45%を占めるほどの異常な偏りです。役員定年70歳という社内規定も、後継者育成のめどが立つまではと退任時期をずるずる延長していました。こうした事実からも、“鴇田政権”の腐敗を嘆く声は社内でくすぶっていたようです」(同前)