日本経済の中心地、東京・丸の内から“マル秘”財界情報をお届けする人気コラム「丸の内コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2023年5月号より一部を公開します。

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東芝再建のカギは?

 東芝(島田太郎社長)が日本産業パートナーズ(JIP)などの連合による買収提案を受け入れることにした。JIPは7月下旬をめどにTOB(株式公開買い付け)を実施する。TOBが成立すれば東芝は上場廃止となる。

 東芝の混乱が表面化したのは不正会計が発覚した2015年4月のことだ。その後、米原発子会社で巨額損失が見つかり、経営危機に陥る。混乱に拍車をかけたのは17年12月に実施した約6000億円の増資。引き受けたのは複数のアクティビストで、その出身者が社外取締役に就くなどして経営を揺さぶったためだ。

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 21年11月、東芝は会社を三分割する方針を発表したが、これにアクティビストは反発した。そこで再建策を二分割に変えたものの、アクティビストはこれも受け入れなかった。今回の非公開化はこうした経緯があってのことなので、TOBに応じるかが今後の焦点と思われがちだが、「アクティビストもさすがに東芝の旨味はここまでと感じている。TOBに応じるだろう」(投資銀行関係者)。

 今後のポイントは、企業価値を大きく損ねた東芝が、果たして再建できるかどうかだ。

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 いまの東芝に残されたのは原子力発電に関する技術しかない。原発には沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)の2つのタイプがある。東京電力や中部電力などが保有する原発はBWRで、これら電力会社のプラントの再稼働やリプレースを担えるのは実質的に東芝しかない。岸田文雄政権の原発政策が生命線といってもよい。

 政権の司令塔である嶋田隆秘書官は電力業界で原子力マフィアと呼ばれている。「電力会社とプラントメーカーを一緒にするのが嶋田さんの悲願」(電力会社首脳)。

 東芝再建のカギを握るのは東電との経営統合となるのかもしれない。