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《なぜ岸田官邸は財務省を一貫して遠ざけるのか》「最強官庁」の恨み節

《なぜ岸田官邸は財務省を一貫して遠ざけるのか》「最強官庁」の恨み節

霞が関コンフィデンシャル

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日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関から、官僚の人事情報をいち早くお届けする名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2023年5月号より一部を公開します。

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ウクライナ電撃訪問は「4度目の正直」

 内閣支持率が微増し、自らが議長を務める広島サミットを控えた岸田文雄首相が得意の外交でさらなる支持率上昇をと張り切っている。

 3月に実現したウクライナ電撃訪問は「4度目の正直」だった。最初は昨年6月、欧州訪問に合わせた計画だったが、まだ戦況も激しく実現性に乏しかった。2度目の昨年末は情報が漏れ、首相は森健良事務次官(昭和58年入省)ら外務省幹部と官邸官僚を「まず情報管理を徹底しろ」と叱責、計画は白紙となった。

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 さらに2月には、米国から「安全が確保できない」と暗に再考を促され、断念する。だが、バイデン大統領の訪問計画が進行していた事情が判明。ウクライナのゼレンスキー大統領の訪問要請があったうえに、主要国首脳会議(サミット)議長の訪問への期待が強く、首相は「3月に行くしかない」と腹を決めた。

岸田首相とゼレンスキー大統領 ©AFP=時事

 訪問計画は、木原誠二官房副長官(平成5年、旧大蔵省)、嶋田隆政務秘書官(昭和57年、旧通産省)らとともに、外務省出身の大鶴哲也秘書官(平成3年)が連絡役となって山田重夫外務審議官(昭和61年)ら少人数で進めた。

 現地のロジを担ったのは中込正志欧州局長(平成元年)だ。首都キーウまでの行程と現地情勢の検分・確認をするため、同局中・東欧課長の近藤紀文(9年)を伴い、中継地のポーランドに前乗りしていた。

 夏の幹部人事では、ウクライナ訪問に同行した山田外務審議官の次官昇格が有力視される。しかし山田氏に燻る醜聞を問題視する向きも少なくなく、麻生太郎副総裁が推す条約畑エリートの岡野正敬内閣官房副長官補(昭和62年)に期待する声もある。山田氏が次官昇格すれば、韓国と粘り強く「徴用工問題」を折衝し、名を上げた船越健裕アジア大洋州局長(63年)が外務審議官に就任する。後任のアジア大洋州局長は有馬裕同局南部アジア部長(平成3年)とみられる。