翻弄される財務省「最強官庁」の恨み節
財源度外視の財政運営を続ける岸田政権に財務省が翻弄され続けている。
統一地方選対策で大型経済対策を打ち出したのに続き、6月の「骨太の方針」で子ども関連予算倍増の青写真を示すと息巻くが、財務省は意思疎通もままならない有様で、省内の士気はかつてないほど下がっている。
昨年末に決定した防衛費増額の内実は、事実上大半を赤字国債で補わざるを得ないと言われる。恒久財源を確保したはずの法人税などの引き上げも、時期は確定できずじまいだった。制度作りに奔走した一松旬企画担当主計官(平成7年、旧大蔵省)は省内きっての秀才で鳴らすが、今回は省内外から大不評を買っている。「苦労は分かるが落第もののフレームを作った責任がある」(省OB)と大きく株を下げた。永田町対策を担った坂本基主税局審議官(3年)、寺岡光博主計局次長(同)も「自慢するほど自民党内のパイプは太くなかった」(同省若手)と冷ややかな視線を浴びる。
年明けに岸田首相が「異次元の少子化対策」をぶち上げると、「事前の連絡はなかったのか」と省内には疑心暗鬼が渦巻いた。共に厚労主計官経験のある新川浩嗣主計局長(昭和62年)と宇波弘貴首相秘書官(平成元年)が「聞いてなかったよな?」と確認しあう姿は「最強官庁」の現状をまざまざと映し出す。
なぜ岸田官邸は財務省を一貫して遠ざけるのか。政調会長時代の岸田氏が当時の太田充主計局長(昭和58年)の入れ知恵でまとめた現金給付策が公明党のちゃぶ台返しを食らった経験が後を引いている。
さらに省出身の木原官房副長官、村井英樹首相補佐官(平成15年)が「財務省印」と目されるのを殊更、嫌うためでもある。省幹部からは「古巣へのアレルギーは政策全体をゆがめるだけだ」と恨み節も聞こえてくる。
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「霞が関コンフィデンシャル」の全文は、「文藝春秋」2023年5月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
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