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非戦

 テロのあとは、恐怖の中で必死に情報を集める毎日でした。人間、どうしても知りたくなるんです。情報を集め、状況を解釈してその意味を考えないと、次に何が起こりどう行動すればいいのかわからない。どうやって生きていったらいいのかわからない。

 恐怖が本当に極限にまで達すると思考停止になってしまうのかも知れませんが、その一歩手前の段階では、人は必死で思考するんですね。たとえば雷が隣家に落ちたら、次はどこに雷が落ちるかということを必死に考える。きっと、そこから科学になったり、芸術ができたりするんだろうと思います。

 宙に放り出されたような気分の中、いま何が起こっているのか、これからどうなっていく可能性があるのか、ぼくは手探りで、主にインターネットを通じて、様々な情報を集めました。何か指針になるような、あるいは真実と思えるような声を拾っていった。そして、集めた情報をEメールで友人たちと共有するようになった。

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 その輪はだんだん広がっていき、情報や意見を発信する人たちとのつながりもできて、それがそのまま本の形になったのが『非戦』という論集です。01年のうちにまとめ、その年の12月に出版しました。

 世界中のいろいろなところで、いろいろな人たちが、同じような輪を作って行動していたんだと思います。その輪がつながって大きくなったのが、たとえばイラク戦争の開戦直前に世界中で行われた数千万人規模の非戦デモですね。

 あれだけ多くの人々が世界各地で、同じ思いをもってストリートに出たのに、アメリカは結局イラクに侵攻してしまった。あのときのアメリカに対する深い失望が、現在の世界の状況につながっていると思います。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。