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 認知症は、男性が相続する時にも影響する。

 父親が先に亡くなった時、相続人は母親と男性になるが、母親はすでに意思能力がないため遺産分割協議書に押印できない可能性が高い。母親が先に亡くなった場合でも、父親が認知症になっていれば同様だ。

 実際には、相続人が認知症になっても押印させることが少なくないという。しかし相続人の間で合意できていれば問題ないが、相続争いが起きていれば、相続人の1人が、別の相続人について「意思能力はなかった」として遺産分割協議の無効を求める可能性がある。

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40代女性が「祖母の認知症発症寸前」にとった相続対策

 相続を一度経験して役に立ったという女性がいる。

 都内に住む40代の独身女性は、父親が亡くなり、地方の実家で1人暮らしをしている母親と、都内のマンションで1人暮らしをしている母方の祖母がいる。

 母親が遠くに住んでいるため、女性は祖母の家に通って面倒を看て、祖母が入院した時は費用を負担した。祖母が2年前に施設に入ると、女性は定期的に施設へ行って祖母と面会し、祖母のマンションの部屋を管理するようになった。母親も、時々上京しては祖母に会いに行くようになった。

 その祖母は90歳を超えると認知症が進みはじめた。

 祖母の様子を見て、女性は祖母の戸籍を確認した。

※写真はイメージです ©iStock.com

 父親が50代で急死した時、女性は母親に代わって相続手続きのほぼすべてを担ったため、相続に関する知識があったためだ。

 祖母は90代、母親は80代と年齢が近いこともあり、女性は2人が実の親子ではないことは知っていたが、詳しい事情は聞かされていなかった。母親に改めて聞くと、祖母は祖父の後妻にあたり、母親は先妻の子供だという。

 女性が戸籍を確認しようと思ったのは、2人の法律上の関係を知るためだった。戸籍を見て嫌な予感は的中した。祖母と母親は養子縁組しておらず、母親に相続権がないと分かったのだ。祖母には相続人がおらず、祖母が亡くなればその財産は国庫に納められてしまう。

 2人が養子縁組すれば母親は相続人となり、祖母のマンションと預貯金を相続できる。