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《不買運動はどこへ消えた?》スラムダンク、すずめの戸締まり、チェンソーマン……韓国で“日本ブーム”が起きた2つの理由

現地ルポ

2023/04/24

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : ニュース, 国際, 韓国・北朝鮮, テレビ・ラジオ

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「学校から近いので、ここには勉強に疲れて、頭を冷やしたいときによく来ています。ゲームも楽しんでいますし、いまは友人と『スラムダンク』にはまっています」

 そう語るのは、延世大学に在学中の女子大生だ。ジーンズにスニーカーというラフな格好で訪れていた彼女たちは、幼少期から日本のアニメを見て育ったという。

「幼いころから『トゥーニバース』(子供向けケーブルチャンネル)で日本のアニメを見て育ちました。それで自然に見る習慣ができて、日本アニメの劇場版が公開されるとほとんど見に行きます。『スラムダンク』は、映画『THE FIRST SLAM DUNK』で初めて知りましたが、すぐにはまって、もう3回見ました。まわりの友達にはレアグッズを買おうと日本まで行く人もいます。男子学生は『バンドリ』(「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」)や、『プロセカ』(「プロジェクトセカイ」)のようなゲームをよくしますね」

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アニメイトの店内。若者で賑わっていた(筆者撮影)

 “聖地”アニメイトに入ると、さらに多くの客で賑わっている。いわゆる“オタクっぽい人”は見当たらない。客の大半が10代から20代の若者だが、家族連れも多い。その中の1人で、息子2人と訪れた40代の父親に話を聞いた。

「息子たちと近くの映画館で『すずめの戸締まり』(新海誠監督)を見て、ここに来ました。私自身も楽しんでしまい、物欲が生じて、『スラムダンク』のマンガ本も購入しようと思っています。昔にレンタルショップで借りて読みましたが、映画を見たら欲しくなったんです」

 中学2年生の長男が好きなアニメは『鬼滅の刃』『呪術廻戦』、それに『チェンソーマン』と日本の中高生と変わらない。

「友達に『映画を見た後は必ずアニメイトに行くべきだ』と言われて、お父さんにせがんで連れてきてもらいました。グッズをできるだけ買いたいです」

アニメイトの店内。ランキングにも日本マンガが(筆者撮影)

 当然ながら、地方から来る若者もいる。京畿道(キョンギド)光明(クァンミョン)から友人と一緒に、バスと電車を乗り継いで1時間半かけて来たという高校3年の男子生徒が特に好きなのは、日本のラノベ(ライトノベル)だという。

「友達から『アニメイト』の話を聞かされていたので、ワクワクしています。『デート・ア・ライブ』(橘公司著)という作品からラノベの世界を知りました。ここに並んでいる沢山のラノベを目にするだけで幸せって感じ(笑)。今日は予算の都合で2冊しか買えないので、何を選ぼうかずっと迷っています」