フリーランスのディレクター、三谷三四郎さんが街頭インタビューを行うYouTubeチャンネル「街録ch～あなたの人生、教えて下さい～」（以下「街録チャンネル」）。
昨年の6月29日には、元陸上自衛隊員の五ノ井里奈さんが街録チャンネルに出演。自分の人生に起こったこととして、自衛隊での悪質なセクハラ被害を訴えた。この動画が配信されたのをきっかけに事件への注目が集まり、さらに本人が署名活動を行ったことなどによって、同年9月29日、陸上自衛隊幹部と防衛省から謝罪を受けることになった。さらに、一時は全員不起訴になった加害当事者3名が、今年3月17日、五ノ井さんに対する強制わいせつで起訴されることになった。
自衛隊からの謝罪を勝ち取った五ノ井里奈さん
――性被害を訴えた、元陸上自衛隊の五ノ井里奈さんの動画については、その後の展開も衝撃的でした。
三谷 僕もこんな風になるとは思ってなかったです。普通にご本人から出演希望の応募が来て「これは気の毒だな」と思って。
ただ、この事件を告発するとなると、自衛隊だから、国を相手に訴えることになる。「それはちょっと怖いかな」とは思ったんです。でも五ノ井さんは、自分が自衛隊にいた証拠になる写真も送ってくれて、信憑性があると感じたし、「これはきっと他のところでは扱ってくれないだろう」と考えました。五ノ井さんが「あった事実を語りたい」ということなら僕個人がやってるチャンネルぐらい扱ってもいいだろう、と。
「自衛隊は組織ぐるみで嘘をついたり、事実を隠蔽しようとしています」「被害届を出しても警察も相手にしてくれません」という内容の応募メールで、最後のところに「この戦いは負けるわけにいかないので、人生をかけて1人で闘っている最中です」と書いてあって、本当に命がけでやってるんだと思いました。
――真剣さが伝わってきて。
三谷 「嘘じゃないんだろう」って普通に思いました。でも本当にこんな結果になるとは全く思わなかったですね。「ひどい、おかしいじゃない！」という声が少しでも上がって、多少なりとも役に立てたらいい、くらいに思っていたんです。
動画があがってすぐに、五ノ井さんへ雑誌からのオファーがいくつか来たみたいで、そこから今度はテレビのニュースに取り上げられて、という流れになって。そうしたら、動画を公開した3カ月後くらいには、自衛隊の幹部の人が、記者の前で五ノ井さんに謝ってる姿を見ることになったんです。
――最初のきっかけが「街録チャンネル」。
三谷 そう言ってくれる人は結構いますね。ただ五ノ井さん自身がしっかりした意志を持って応募してきてくれたし、もちろん本人の強い思いがあってのことです。だいたい僕は「世の中を変えたい」とか思っていたわけではないので。
――そういう思いは全くないんですか？
三谷 ないですね。僕はジャーナリズムで「街録チャンネル」をやっているわけじゃなくて、バラエティのディレクター感覚でやっているので。
