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「ちょっとストッパーにならないといけない時もありますね」

 29日からリハビリ組に合流した牧原大選手は、心中いろいろあったはず。ただ、とにかく一早く復帰するべく前しか見ていない様子だった。5月10日に取材に訪れた際、牧原大選手はノックを受けていた。「本当に怪我してるの?」と疑いたくなるほど元気に動いていた。

 回復具合を尋ねてみると「順調っす」といたずらっぽい笑顔。競技復帰まで1か月という中で、まだ2週間弱しか経っていないのに。現在の回復具合は「MAX!」とおどけてみせた(笑)。

筑後でリハビリ中の牧原大成選手 ©上杉あずさ

 高田知季リハビリ担当コーチにも話を聞いてみた。高田コーチといえば、牧原大選手とは長年二遊間を組んだ仲でもある。2学年下の後輩のことは当然良く知っている。

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 実戦復帰を100とすると、「マッキーはもう70~80%まで来ていると思いますよ」と高田コーチも順調さに頷く。昨季まで現役で、自身もケガに泣かされた経験も多いからこそ、牧原大選手のいち早い復帰を後押ししたい思いは当然ある。しかし、「ちょっとストッパーにならないといけない時もありますね」と表情を引き締めた。「アイツの場合、ちょっとやりすぎるところがあるので、しっかり説得しながら……」と選手のために、コーチとしての厳しさも持つ。「早く復帰したい気持ちは高まるので、こっちサイドとしては、その気持ちをいかに上手く抑えるかというのも必要で。中途半端に治してやっちゃうと、また怪我に繋がるので、この時間が無駄になってしまう」と冷静に寄り添っていた。

 一方で「言われたことだけやっていても時間かかるんで、自分のできる範囲で」と前のめりな牧原大選手。これはあくまでも本人の希望だが、「それぐらいで行けたらベストかな」と来週16日からPayPayドームで開催される2軍公式戦で実戦復帰したい目標を持っていた。熱い「気持ち」があるからこそ、回復も早いのかもしれない。そんな選手はチームの浮上にも欠かせない存在だと思う。(でも、高田コーチの言うように、無茶はしないで欲しい……)

強い「気持ち」はいかにして養われてきたのか

 随所に表れる牧原大選手の強い「気持ち」とは、いかにして養われてきたのか。

「自分が1軍で結果出せるようになったのは、あまり結果を求めすぎずにやれるようになってきてからかな。昔は結果が大事だと思いすぎて結果が出なかった。それで、これでダメならまたやり直せばいいやってくらいに開き直ってやったら、いい方向に流れたんで、今もそういう気持ちでやってます」

 開き直って思い切りやれるようになると、自然と「気持ち」も前面に出て、結果も付いてきたのだという。

 開き直るとは「ミスを恐れずにやる」という心掛け。

 ミスを恐れずにやれるのは、「普段の練習で、“試合でミスしても悔いがない練習”をやっておくこと。そうすると、試合でそうなった時に自然と体も動く。あとは、もうなるようにしかならないんで」と牧原大選手。

 ここぞの場面で力を発揮できるのは、日頃の意識と練習の賜物だった。

「守備に関しては、ピッチャーが一生懸命投げてるんで、できるだけヒットの打球もアウトにしたいっていう気持ちで守ってますし、打つ方では、結果結果っていうよりも、その一打席に悔いがないようにって気持ちです」

 頼もしすぎやしないか。

 日本一を目指すホークスには、こんな「気持ち」全開で戦う選手が必要だと改めて思った。マッキーの復帰はそう遠くない。「気持ち」のこもった熱いプレーが観られる日を心待ちにしたい。ただ、高田コーチの言うように無理だけはしないで欲しい。

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