とても幸せな時間だった。
2月10日(土)、今年2018年に読売巨人軍の宮崎キャンプ60周年とホークスが球団創立80周年を迎えることを記念して行われた両チームのOB戦を、KIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎で取材してきた。
仕事を忘れてプロ野球を楽しんだのはいつぶりだろう?
ホークスOBチームの野村克也総監督は試合後に「見てのとおり、試合はホントにつまらない。無理だよ。年寄りばっかでやってるんだから」とボヤいたが、そう言いながらもノムさんはにやりと笑っていた。
ひと際大きな声援を浴びていた城島健司氏
グラウンドでは確かに珍プレーが続出した。9番セカンドでスタメンの藤原満氏、御年71歳は、平凡なフライをグラブにも当てられずに落球。新井宏昌氏(65)は2番打者で先発しながら試合前から腰を痛めていたらしく1球見送っただけで代打を要請してベンチに引っ込んでしまった。
一方、秋山幸二氏は55歳を迎えてもなおスリムな体型を維持。3回の第2打席で先制タイムリーを放った。現役時代や監督時代は余計なことは喋らない寡黙な人物で通っていたが、ユニフォームを脱ぐといつもニコニコしていて、じつは言葉も多い
「(巨人OBの)槙原が打たせてくれたんだよ(笑)」と最後まで上機嫌だった。
工藤公康・現ホークス監督はいつもと違う「FDH」のユニフォームでマウンドへ。秋山氏もそうだったが、1999年の福岡移転後初優勝メンバーの福岡ダイエーホークスのユニフォーム姿には本気で感動してしまった。
工藤監督は先発して2回1安打無失点。場内表示では最速134キロをマーク。これには本当に驚いた。
いや、それ以上にびっくりし、今回の豪華OBの中でもスタンドからひと際大きな声援を浴びていたのが城島健司氏だった。2012年に阪神タイガースで現役を退いて以来、野球の世界から完全に身を引いており、福岡では釣りの冠番組をもっていて、完全に釣り人として第2の人生を謳歌している。この日も「新人の時みたいにユニフォームが似合うかなと鏡の前に立ってみた。けど、(釣具メーカーの)がまかつの服の方が似合ってるかな」と笑い飛ばした。城島節は今も変わらなかった。
そしてプレーも健在だった。先発マスクを被り、工藤“投手”の快速球や切れ味バツグンのカーブを難なくキャッチング。そしてセカンドへのスローイングも矢の様だ。普段は静かな記者席からも「おー!」と声が上がった。打撃のルーティンも昔のまま。右打席に入る前に屈伸をして一度力強く素振りをする。そして打席ではバットでベースをトントントン。右手で芯を触ってから投手との勝負に入るお決まりの動作が再現された。
「引退してからキャッチャー防具どころか、ユニフォームだって着てない。キャッチボールすらしてない。だけどグラウンドに立ってみると、僕も野球してたんだなって思いました。(ルーティンも)思い出さなくても出来たね」
とにもかくにも、明るく楽しく真剣に繰り広げられた名珍プレーの数々。レジェンドたちに共通していたのは年月を重ねても投げ方や打ち方の“クセ”がそのままだったこと。それが尚の事、野球ファンの琴線にふれるのだった。