「今日のゲームも楽天イーグルスが白星を掴みました!」

 ラジオ実況で実に何度も叫びたいフレーズである。来週からスタートする日本生命セ・パ交流戦2023で試合終了時に勝利のシャウトを熱望している。

 楽天イーグルスは現在パ・リーグ最下位ではあるが、いざ巻き返しを図って順位が上がると信じている、そう「信じる者は救われる」、この精神である。

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 さて、今回のコラムは、今の一軍メンバーの中で一番若く、エネルギッシュな3年目の内星龍選手をご紹介したい。

4月23日、プロ初勝利を挙げ、チームメイトに祝福された内星龍 ©時事通信社

「まずは自分が自分を信じないとダメだなと思って」

 内選手はサッカー日韓ワールドカップが行われた2002年に大阪で生まれた。小学生の時に野球を始め、高校は大阪の名門校・履正社高校に入学。新3年生になった2020年春にようやく掴んだ甲子園出場の切符だったが、大会は新型コロナウィルス感染拡大のため中止を余儀なくされた。

 しかし、その年のドラフト会議で6位で指名を受け楽天イーグルスに入団。1、2年目は一軍登板機会はなかったが3年目となる今シーズンはプロ初登板を果たし、4月23日にはプロ初勝利を掴んだ。ここまで13試合に登板し防御率1.29の好成績を残している。

 若手有望株の背番号69番・内選手に迫った。

好きなおにぎりは「納豆巻き」の内星龍選手 ©河内一朗

――いま一軍にいて感じていることは?

内選手「いつも緊張感があるので、一日一日今日も終わったなという達成感と明日も始まるという緊張感で、毎日を生きているなという感じです」

――どのような部分に手ごたえを感じていますか?

内選手「登板が少しずつ増えてきている中で、間隔も空いたりしているので身体も心もいつでも準備は出来ています。あと真っ直ぐを投げる練習の中で、変化球の精度も上がってきてスライダー、フォークも曲がったり落ちるようになったと感じています」

――試合中も堂々とされていますよね。

内選手「マウンドに上がればチームから(試合を)託されているので、まずは自分が自分を信じないとダメだなと思って投げています」

 先月21歳になったばかりの内選手の発する言葉は逞しかった。マウンド以外でも威風堂々とした立ち振る舞いで、常にニコニコと笑っている。インタビューをする側がハッピーな気分になる、何とも不思議な魅力を持っているのだ。

 そんな内選手にさらに質問を重ねた。

――今までの教えの中で大事にされていることは?

内選手「日々の練習から、試合は練習のように、練習は試合のようにするというのを意識しています。これは高校の時に通っていた整骨院の先生に教わりました。僕は普段は緊張するタイプで、(緊張するのは)大事なことだと思うのですが、緊張しすぎるのも良くないので。練習の時から呼吸だったり、この考え方を大切にしています」

――高校時代の恩師・岡田龍生氏からはどのような事を学ばれましたか?

内選手「岡田先生には生活態度とか、練習に対する思いを教わりました。(履正社)高校からプロ野球選手が何人も出ているので、その選手の高校時代はこうだったとか、それ以外に特に野球人としての礼儀をいっぱい学びました。今も良いことも悪いことも報告して、いつも言葉をいただいて頑張れています」

 若き右腕が試合で緊張しすぎないように普段の練習時から取り入れていること、そして野球以外での人としての在り方。この教えが内選手の礎になっているからこそ、いざ何があったとしても平常心でいられるのだろう。

 思えば5月3日の千葉ロッテ戦。延長10回表に内選手は2ランホームランを許した。しかしその直後は2者連続三振と外野フライに抑え、冷静な表情でダグアウトに戻った。打たれたのは相当悔しかっただろう、ただ引きずることなく後続をピシャリと抑えたのだ。そして、その日以降失点は一切許していない。