近年、進化の目覚ましいAI分野だが、一方で「人間の仕事を奪うのではないか」と危惧する声もある。小説もイラストも生成できるようになったAIによって、これから人間が作るものは無価値になるのだろうか? ここでは、同分野に詳しいゲームAI開発者の三宅陽一郎氏(スクウェア・エニックス所属)のインタビューを紹介。

 小説家でライターの渡辺浩弐氏の新刊『7つの明るい未来技術 2030年のゲーム・チェンジャー』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

AIが小説や音楽を作れるまでに発達した時代に、人間がやるべきこととは? 画像はイメージ ©getty

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創作をAIに任せるようになるか

――現在の話になりますが、2022年後半から、いわゆる生成系AIが話題になっています。AIによる創作物、絵や小説や音楽がネット上に大量に溢れ、論議を呼んでいます。生成系AIは今後ゲームの制作にも導入されるでしょうか。

三宅陽一郎(以下、三宅) ゲーム産業はかなり前から生成系AIに対して意識的でした。AIによってゲームそのものを作り出していこうという技術はPCG(プロシージャル・コンテンツ・ジェネレーション)と呼ばれ、1980年代から使われていました。その草分けは『ローグ』(1980年)です。PCGによるマップの自動生成機能のおかげで、入るたびに形の変わるダンジョンが実現していたんですね。

――『ローグ』以降、ローグライクというジャンルが成立していて、日本ではスパイク・チュンソフトの『不思議のダンジョン』シリーズが知られていますね。

三宅 そして欧米で2000年代、ゲームエンジンの中に自動生成を取り入れようという動きがあり、例えば広大な自然風景を舞台とするFPSなどでは、複雑な森の成形はほとんど自動生成で作られるようになっていきました。

 デザイナーが木の種類と密度を入力すると勝手にジャングルができあがっていくようなツールが開発されていました。そして制作プロセスにそういうものを取り入れていく過程で、どの部分のどこまでを人間が作るのか、どこからをプログラムに作らせるのかということについて深く考えられ、議論が重ねられたわけです。

――プロフェッショナルの視座から、昨今ネットで話題になっている生成系AIについてはどう見ていますか。例えば2D絵画作品について、一般の人がAIを使って量産している作品群のクオリティーに、衝撃を受けている人は多いと思いますが。

三宅 2021年にOpenAIという人工知能研究所が発表した論文がきっかけになって、Stable DiffusionとかMidjourneyといった汎用画像生成系AIが公開されました。今はそれらを多くの人々が使うことによって2Dイラストレーション作品がたくさん公開されている状況ですね。2023年以降は、3D‐CGの生成系AIが出てくると思われます。

――3Dですか! なら、ゲーム制作も根底から変わってきますね。