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 2階の部屋にコオロギが出たり、大量のヤモリが天井に張り付いていたりも。また引越し当初は、1階物置きの奥から獣臭が漂ったりした。

「家のつくりも変わっていて、寝室とリビングがなぜか巨大滑り台でつながっています。エアコンを設置していた形跡もなく、電源を引く工事からしなければ行けませんでした。あとこれはそれぞれ地域のやり方があるのでしょうけど、ゴミの出し方も独特。ゴミボックスを自分で用意して、ゴミを出したらその上に赤い石を置くようにと言われました。最初は戸惑うことばかりでしたね」

 

 移住してからのそれら顛末は、漫画『糸島STORY』に詳しく描き続けてきた。

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「多少の心理的な誇張はあれど、ほぼ実話です。漫画内では我が家のことを『ヤバハウス』と呼んでます。自分の苦労自慢をしたいわけじゃなくて、おもしろい漫画になるはずと思ってやっています。日々を送るなかで起きた出来事や出会いを、すべて漫画にする『ヒューマン漫画家』というのが僕のスタンスなので。糸島に来てから生活の細部に否応なく目を向けるようになって、それが漫画の表現にも反映され生かされている実感はありますよ」

 描き続けているうち、地元での認知はじわじわと広がってきた。近所の住民から「漫画家さんなんですよね?」と声をかけられたり、行きつけの歯科医で身バレしたりもするように。漫画は概ね好評を持って受け入れられている様子だ。

「糸島の人たちが僕の漫画のファンになってくれるのは何よりうれしい。地域で生きていく漫画家としてまずは糸島で浸透し、ついで福岡でも広く知られ、それから全国区、さらには世界へとつながっていけたら」

 では移住の決断には、悔いなし?

「もちろん。事情が許す人は限られるかもしれないけれど、移住生活は刺激いっぱいでオススメですよ。ただし住環境選びは、あわてずしっかりチェックしながら進めるのが吉ですけどね」