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「X家」対「 Y家」、村の派閥争いに巻き込まれ…5回移住を繰り返した漫画家が語る、「地方移住」のしんどい現実

2023/05/15

 最近、「移住に失敗した」というYouTubeがいくつか配信され、さまざまな議論を呼んでいる。人間関係の悪化などで我慢が限界に達した移住者が、その顛末を発信したものだが、今回は、そんな地方移住者たちの遭遇したトラブルの数々を紹介していく。(前後編の前編/後編を読む)

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一軒家まで建てたが、1年で去った移住者

 少子高齢化が進む地方において、移住者を増やすことは喫緊の課題だろう。しかし、都会と田舎のギャップや独特な人間関係などが障害となり、なかなか移住者の定着が難しいのが現実だ。

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※この写真はイメージです ©AFLO

 ある自治体職員は、こう嘆く。

「地域おこし協力隊として、田舎に来る若い人もいるが、働き口の少なさや生活環境、人間関係などが合わず、その後も定住する人は少ない。来てくれるのはありがたいですが、そもそも具体的なビジョンもスキルもなく『地方を活性化したい』というフワッとした気持ちの人もいます。我々の受け入れ態勢の問題もありますが、そういう気持ちで都会から来ても、田舎では暮らしていけないということなんでしょうね……。

 以前うちの自治体にも、東京から男性が移住したいとやってきました。彼は、一軒家まで建てて意気込んでいましたが、1年ほどで東京に帰りましたね。理由はわかりませんが、やはり思っていた以上に生活環境が合わなかったんでしょう」

病気をしても、現地の知り合いは見舞いに来ない

 一方、高松信司さん(50代・仮名)は、沖縄に移住した先輩について、次のように話してくれた。

「先輩のAさんは定年退職後に東京から沖縄に移住しました。初老の独身男性の彼は、那覇市の瀟洒なマンションに住み、南国沖縄で悠々自適のセカンドライフをスタートさせたのです」

 Aさんは、しばらくすると飲み歩くだけの生活に飽きたのか、仕事を引退したにもかかわらず現地で飲食店を開業したという。しかし、沖縄は人口のわりに飲食店の多い激戦区。のんびりした日常は超ハードモードに様変わりした。

「忙しく飲食店を経営していましたが、そのうち脳梗塞で倒れてしまったんです。わりと危険な状態なのに、現地で知り合った人は誰も見舞いに来てくれず、東京から友人たちが衣類などを持っていって世話をしていました。

 ただ、県内の病院では手が負えないとのことで、本土の病院に入れるしかなくなってしまった。しかし、気圧の関係で飛行機に乗ることはできず、船で本土まで行くしかない……。昔の知り合いたちがどうしようかと考えているうちに、結局Aさんは亡くなってしまいました。

 引退後に地方に移住して、悠々自適のセカンドライフを夢見る人が多いですが、正直、歳を取ってから全然知らない地方への移住なんてするものではないと思いました」

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