田舎暮らしにあこがれたが…5回も引っ越しをした男性の体験談
ここからは、実際の移住経験者の声を紹介しよう。漫画家の市橋俊介氏(48歳)はこれまで5回の移住を経験している。市橋氏は、移住のきっかけをこう話す。
「私は東京生まれ、東京育ちで、幼少期から30代までに23区内、多摩、西多摩と少しずつ東京の郊外に移り住むようになり、段々と田舎に憧れるようになったんです。富士山が大好きで、毎週のように遊びに行っていました。
10年前アラフォーになった私は、東京で相変わらず売れない漫画家をしていましたが、ひょんなことから田舎暮らしを描く漫画連載の機会をいただいたんです。これを逃すと、一生、田舎暮らしなどできないと思い、喜んで受諾しました」
この連載をまとめたものが『ぼっち村』1~3巻、『ぼっちぼち村』1巻(いずれも扶桑社)、『ぼっちぼち村』2巻(農文協から近日配信予定)である。編集部の支援も一部受けつつ、念願の田舎暮らしがスタートした。現在、連載は終了しているが、市橋氏は5回目の移住先である東海地方のとある街で田舎暮らしを続けている。
ただ、やはりこれだけ引っ越しを重ねるのには、それなりの理由があったという。市橋氏は過去の移住先での体験を振り返る。
「田んぼと畑付き」の約束が、急に反故に
「最初は富士山にほど近い里山で暮らしました。『空き家バンク』という制度を利用して、築200年ほどの古民家を借りたんですが、そこの大家がクセのある方だったんです。
家に勝手に入ってきたり、空き家バンクのサイトで『田んぼと畑付き』と書いているのに、『貸すなんて言ってない』と急に反故にされたり。というのも、実は、サイトには田んぼと畑について書いてありましたが、大家と交わした契約書には田んぼと畑の貸し借りについての記述がなかったんです」
一般的には宅建業者など第三者が間に入って契約を行うことが推奨されているが、「キミも仲介手数料とか払うの嫌でしょ。だから、うちで契約書用意するから」と押され、市橋氏は大家が作成した契約書で取り決めをしてしまっていた。
困った市橋氏は、空き家バンクを管理していた地元の役場に電話し、実際に空き家バンクのサイトを見てもらい、担当者に確認させたという。