田舎暮らしに憧れがあり、漫画連載の仕事を機に田舎へ移住した漫画家の市橋俊介氏(48歳)さんは、理想の土地を探すべく、これまで5回もの引越しを重ねてきたという。

 3回目の移住で限界集落に住まいを構えるも、ややこしい人間関係や厳しい自然環境に疲弊し、観光も農業も盛んな八ヶ岳の麓の自治体に引っ越した市橋さん。そこで市橋さんを待っていたのは“ゴミ出し問題”だった。(前後編の後編/はじめから読む)

4度目の移住先の様子(市橋俊介さん提供)

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「テメェ、ムカつくんだよ!」地元の飲み会で起きた“事件”

「町内会に入らないとゴミ集積所を使わせてもらえませんでした。聞けば4月の初めに総会という町内会の組が一堂に会する行事があり、そこで移住者の仲間入りをみんなで認め、それを経れば新参者もゴミ集積所などが使えるようになると。

 しかし、私は4月末に越してきたので、総会に参加できず……他の住民は『それはしょうがないから、町内会費さえ払えば集積所を使っていいよ』と言ってくれたんですが、50代男性のZさんは、なぜか私を強烈に嫌っていて、彼がずっと反対していたんです。

 めんどくさくなってしまったので集積所は使わず、役所や支所まで車でゴミを捨てに行っていたのですが、私の後に移住してきた社会的に地位が高めの職業の人は即町内会にも入れて、集積所も使えていたので、人によって対応が違うんだなと感じました。私の漫画家という職業がフラフラしているように見えて気に入らなかったんでしょうか……」

 そんな中でも市橋氏は町内会の行事や飲み会に参加するなど、積極的に交流を図っていた。しかし、引っ越すまでの4年間、最後までZさんとのわだかまりは残ったままだったという。参加した飲み会で、市橋氏が病気(田舎に移住した後に難病を患い、アルコールは医者に止められていた)を理由に酒を断ったときには「テメェ、ムカつくんだよ!」と言いながらZさんにヘッドロックされ、腹を小突かれた。

「『警察呼びますよ』『呼んでみやがれ! テメェん家、火つけてやるぞ!』という展開になってしまったんですが、その場に居る人たちもZさんとの付き合いがあるので、『まあまあ、ここは喧嘩両成敗! 握手で仲直りだ』となあなあな対応をされてしまいました。

 その日、Zさんは怒って帰ったのですが、以降、道ですれ違ったときも彼は声を上げて威嚇してきたり、無視したり、あからさまな嫌がらせをしてきました。最後は私も慣れてきて、あまり気にはしなかったですが」

 そうこうしているうちに、市橋氏と妻の間に子どもが生まれる。それを機に引っ越しを検討し始めた。

市橋さんとお子さん(市橋俊介さん提供)

「出産や私の病気のこともあって病院に通うことも増えたのですが、大きな病院まで車で片道1時間かかるんです。また、駅まで徒歩約100分の世界で、家から通えそうな学校が進学校か農業高校しかないなどと極端。子どもの教育のことも考えると選択肢が少ないと感じました。

 Zさんのことを除けば、とても住みやすい場所だったんですが、子どもや病院のことも加味してまた引っ越しを決めましたね」