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ゴミ出しで大揉め、町内の飲み会で「テメェん家、火つけてやるぞ!」…5回移住の漫画家が語る「地方」の“住みづらさ"

2023/05/15
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「生産性のない人間に来られても」「産んで育てる人しか来るんじゃねぇ」

「50~60代で越して来て、田舎で10~20年は楽しく暮らせても、大きな病気をしてしまうと、都会へ戻って行く人がほとんどでした。結局、都会の利便性にはかないませんからね。また、そういうリタイヤ組に対しては辛辣な田舎の声もあります。『生産性のない人間に来られても、税金を使われるだけだ』と耳を疑うような発言を実際に聞きました。他にも『子供を産んで育てる人しか来るんじゃねぇ』という時代錯誤な文句さえ耳にしましたよ。それだけ田舎は疲弊し、焦っているんだと思います」

 では、結局田舎に移住して、うまく立ち回れるのはどのような人なのだろうか。

「自然が豊かということは、それだけ人間には厳しい環境が待っていて、そこで暮らすことは相当な覚悟が必要です。そして、最終的にはやはり人間関係がキモになります。

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 田舎でもうまく立ち回れる人は、結局は都会でもうまくやれていた人です。都会での人付き合いに疲弊した人が、安易に田舎に越してみたところで、より濃厚で逃げ場のない人間関係にやられてしまうだけです。そういう方は、大人しく都会のマンションで周囲と関わらずに暮らしたほうが良いでしょうね。もしくは不便さを受け入れて、近所に誰も住んでいない山奥のポツンと一軒家に暮らすとか。

 結局、田舎暮らしは、特定の頑固な人やうるさい人といかに関係を築くかがカギです。私は最初の挨拶だけはしっかりして、地域の行事にも足を運び、そのなかで仲良くなれそうな人と交流していました。

 嫌がらせをしてくるような人は、往々にして地域でも住民から距離を取られているので、あまり気にしても仕方ないです。私は気に入らないことがあったら『すぐ引っ越してやる!』と思っていたので、案外気楽に過ごしていました」

 ここまでみると、そもそも出身地でもあることだし、利便性の高い東京に戻ってきても不思議はない。市橋氏にその予定はないのだろうか。

現在の住まい。手を入れたところ、快適に住めるように。地方都市近辺にある(市橋俊介さん提供)

「東京に戻るタイミングやお金を失いましたし、5回目の移住のタイミングで連載を打ち切られたこともあり、漫画の仕事もなくなりました。今から戻ることはあまり現実的ではないと感じています。

 とはいえ、現在のトカイナカ生活は自然もありつつ、ほどよく利便性もあるので我々家族は今の住まいを気に入っています。田舎暮らしの酸いも甘いも嚙み分けつつ、漫画家に戻る事を夢見て生きていきたいと思います」

 移住者も地元住民も、折り合いをつけて暮らしていくしかなさそうだ。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

ゴミ出しで大揉め、町内の飲み会で「テメェん家、火つけてやるぞ!」…5回移住の漫画家が語る「地方」の“住みづらさ"

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