こういう人は嫌われる…移住者たちの“あやまち”
現在、市橋氏は都会と田舎の中間、いわゆる「トカイナカ」の地方都市郊外に住んでいる。4回も移住を繰り返し、お金がなくなったことと、漫画のネタになればという計算もあり、試しに競売に挑戦し、まさかの落札してしまったのが、今の住居だ。
競売物件で数年間空き家だったこともあり、最初は荒れまくっていたのだが、手を入れて掃除したら、そこそこ快適になった。病院や学校にも通いやすい土地であり、「これが最後の移住」と市橋氏は語る。
これまで、移住者を受け入れる地元住民にスポットを当ててきたが、一方で市橋氏は移住者側の問題も語ってくれた。
「移住者が多いような人気のスポットでは、そもそも移住組と地元民の棲み分けがされていて、お互いあまり関わらずに暮らしているケースも多かったです。別荘地や、移住者が大半を占めるような地域なら、面倒な人間関係は少ないです。
移住に失敗するのは、野心に溢れて極端な自然農法や循環農法、不耕起栽培などを提唱し『自分がこの田舎を変えてやる!』と意気込んでいる方などです。往々にしてそういう人は地元に嫌われますね。昔から頑張っている地元の農業関係者からすれば気持ちのいいものではないので、やれるもんならやってみな、と反発されて当然です。
実際、地元の協力も得られないまま、机上の空論だけで自分の農業に挑戦し、一度も作物を出荷できずに半年で諦めてしまう人を各地で見ました。
私も農業は10年近く経験しましたが、個人が新規参入で農家として食っていくことは、ほぼ不可能だと感じました。移住者はなんでもいいので、農業以外に生活の基盤を確保することが重要だと思います」
他にも東京の商社や広告代理店への勤務経験がある人が移住してきて、農業イベントなどを行うケースも稀にあったという。しかし、結局は本人や東京の関連人脈が潤うばかりで、地元へ貢献しているとは言えなかった。
「意識高い系の大学生などを集めて、田植えや稲刈りイベントを開催し、田舎暮らしのアドバイザー的な事業を行っている移住者がいました。ただ、地元民の中には、彼を訝しんでいる人も少なくなく『農業の基礎もできていないのに、偉そうに東京の人たちに指導していて、稲の持ち方も鍬の使い方も酷いもんだ』とぼやいている方もいました。
若い子を集めてくるので、地元の一部権力者や役場はチヤホヤしていたのですが、ほとんど地元の利益にならないと分かったり、主催者の女性トラブルなどもあったそうで、見切りを付けられ、結局去っていきましたね。
私からすると、あれだけ乗っかろうとしていた地元の人も、適当な知識や渡世術で、好き放題やってた移住者もどっちもどっちだと思いますが、良くも悪くも、ギラギラと欲深い人間は田舎にも集まってくるのだと感じました」
もちろん、移住者は野心に燃えた若い世代だけではなく、お金にゆとりのあるリタイヤ組もいる。しかし彼らも厳しい現実に直面するという。