時には声優養成所の講義を受けさせてもらえなかったり、ほかの生徒がえこひいきされる様子を目の当たりにしたことも……。若かりし頃の三石琴乃さんが「この世界は不平等がまかり通る」と感じたエピソードを、新刊『ことのは』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/2回目に続く)
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養成所時代に遭った「講師の嫌がらせ」
養成所ゼミ科の頃、事務所の預かりとなりました。ただすぐに仕事があるわけでもなく、「もう少し勉強を続けなさい」と、附属養成所に掛け持ちで通うことになりました。そこで私、ちょっとした嫌がらせに遭うことになるんです。しかも講師から。
生徒たちが順番に課題を披露してアドバイスをもらうなか、必ず私の前で終わりになったり。また、その頃は千葉の実家から約2時間かけて通っていたのですが、電車が遅れて遅刻してしまった時、教室の鍵をかけて入れてもらえなかったり。何度ノックしても開かず、ドアの前でただ呆然と待っていました。
きっと、その時の講師に、「他所で学んできた生徒をどうして自分が教えないといけないんだ」という気持ちがあったんでしょうね。最初からいた自分の生徒に少しでも時間をかけてあげたいでしょう。今ならわかります。でも、当時はまだ20歳ぐらいですからね。講師も声優として活躍中の方でしたから、いろいろ学びたいって思っていただけに、ガビーン!でしたね。
これは自分にも言っていることですが、人を指導することには、当然ながら向き不向きがある。売れているプレイヤーが良き指導者とは限らない。当時私は不幸にも落とし穴にすっぽり落ちてしまったということなんです。
その頃だったと思います。“この世界は不平等がまかり通る”と感じたのは。先生が気に入っている生徒が、あからさまに贔屓されているのを目のあたりにしたり、特定の子がいつもオーディションメンバーに選ばれたり。それが不適切な関係から来るものだったり。ただただ、夢を追いかけて頑張ろうと思っていた私にとっては“ガビーン! もう、やめてー!”って感じでした。