大事件後にも「脱力ネタ」が
脱力してしまうが「感情的にならない」のメリットをあげれば、「煽らない」ということでもある。最近で言えば和歌山での遊説会場に爆発物が投げ込まれたあとも首相は淡々と遊説を続けていた。帰京後にはいつものように理髪店に行っていた。留飲を下げるようなことは言わずにすべてを日常化してしまう。熱狂は生まない代わりにすべてを淡々とさせる。
だからだろうか、岸田首相は大事件の後にもかなりの割合で脱力ネタがついてまわる。決死の覚悟でゼレンスキー大統領に会ったという大ネタの後には「必勝しゃもじ」、爆発物事件の後は「うな丼大臣のスピーチ」である(各自確認)。あたかも脱力ロンダリングが発生して人々の感情をたかぶらせないようにしているみたいだ。
「本当は怖い岸田政権」なのか
そんななか着々と岸田首相は「安倍さんができなかったこと」をしている。先週末にはこんなニュースも。
『軍事大国化が「日本の選択」 岸田首相、タイム誌表紙に』(共同通信5月11日)
米誌タイムは岸田首相を表紙に掲載したのだが、「長年の平和主義を捨て去り、自国を真の軍事大国にすることを望んでいる」と首相を紹介した。現在は見出しが変わって「首相は平和主義だった日本に、国際舞台でより積極的な役割を与えようとしている」になっている。外務省が異議を唱えたという。でも海外メディアからは岸田首相は大転換しているように見えるのだろう。
しかし同時にセットなのが「具体性に乏しい答弁が多く、議論が深まっていない」(朝日新聞5月9日)という姿勢でもある。昨年末にどさくさに発表した安保関連3文書改訂など、もろもろの案件を思い出す。でも物事はどんどん進んでいく。やはり「本当は怖い岸田政権」ではないだろうか。