選手に求めた「休むな、休ませるな」
――先を見据えたチームづくりで、名波監督は5シーズン目に入ります。鹿児島キャンプはケガ人もなく、順調に仕上がっているように見えますが。
「選手には言ってないけど(強度は)上げています。たとえば12セットやる1対1。去年は1本1分、残り4本だけ45秒にしたんですけど、今年は1本1分12秒、残り4本を1分6秒でやっています。かなりきついとは思うけど、選手は1分でやっていると思っているはず。そうやっても気づかないぐらい、力がついてきたということ。去年、トップ5の目標を掲げると同時に『休むな、(相手を)休ませるな』と選手たちには求めました。休むなは体を休ませずに足を動かせというのもあるけど、頭もそう。疲れていても頭を使って自分たちが仕掛けていけば、当然相手も休めなくなりますから」
――この「休むな、休ませるな」が出てきたのは何かきっかけがあったのでしょうか?
「昨年ホームのセレッソ戦(8月19日)、荒木(大吾)が大ケガをして、残りの10分強を10人で戦わなきゃいけなくなった。0-1で負けていて、どうしても勝ち点が欲しい。終盤にコーナーキックになったときに、(中村)俊輔がサッとショートコーナーにして相手の対応が遅れて同点ゴールが生まれた。まさに『休むな、休ませるな』だと思って、あれから言い始めるようになったんです」
――今ピッチで起こっていることをうまく言葉に落とし込むから選手の心に響きやすい。
「大切なのはリアリティーがあるかどうか。たとえばシーズン中、目の前の5試合を『4勝1分けの勝ち点13でいくぞ』と言ったところで、まだウチのチームにそのリアリティーはない。一つひとつを拾っていく感じです。そして結果的に勝つにしろ、勝てないにしろ、次のゲームにつながる終わらせ方をしていく。一言でくくるなら“継続”ですよね。リアリティーを持たせて、継続していくから一歩ずつ階段を上がっていけるんだと思います」
*ジュビロ磐田・名波浩監督のやりかた #2〈言葉のひと・名波浩が語る「選手がキャラ立ちするためのコミュニケーション法」〉に続く