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 台から少し離れた「中陣」でラリーをしながら、機を見て豪快にコースを突く王道スタイルで日本のトップに登り詰めた。素顔は清楚な印象通りの謙虚な性格。けれども、ひとたびラケットを持てば自ら得点を奪いにいく攻撃的なプレースタイルを貫き、世界と渡り合った。

2012年 平野早矢香、福原愛と出場したロンドン五輪女子団体戦で、日本卓球史上初のメダルとなる銀を獲得 ©文藝春秋

高速卓球の若手が台頭 そして、生まれた「名勝負」

 潮目に変化が起きたのは全日本選手権で3連覇を飾った2016年以降のことだ。台前に張り付く「前陣型」から高速卓球を展開する伊藤美誠や平野美宇が台頭し、女王の座を明け渡した。早田ひなを含めた2000年生まれトリオの勢いはすさまじく、「卓球スタイルが古い」という心ない言葉も飛んだ。けれども、そこで諦めないのが石川。前陣速攻型への対応力を磨いて反撃の時を待った。

2016年、リオ五輪団体戦ではチームの中心として仲間を鼓舞。銅という結果にも「今回の方が重い」と語った  ©文藝春秋

 こうして迎えたのが2021年1月の全日本選手権。当時世界ランク3位で優勝候補筆頭とされていた伊藤との決勝は、今なお語り草となっている名勝負だ。

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 第1ゲームは多彩なサーブを武器とする伊藤に4-11で奪われたが、第2ゲームは対応力を発揮した石川が取り返し、ゲームカウントは1-1。第3、第4ゲームは再び伊藤のサーブと速攻に苦しめられたが、1-3と追い込まれてから驚異的な粘りを見せる。

 第5ゲームを12-10と僅差で奪うと、第6ゲームも連取。最終第7ゲームは9-5から9-9に追いつかれたが、そこからが石川の真骨頂だった。「世界一美しい」と称されてきた得意のフォアハンドで2連続ポイント。5年ぶり5度目の優勝を果たすと、両手を突き上げて喜びを爆発させた。

2021 名勝負となった伊藤美誠との全日本選手権決勝。5年ぶりの女王に輝くと両手を突き上げ涙した/写真提供 時事通信