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「ジモン最強説」をこのまま楽屋話で埋もれさせておくのは、あまりにも惜しい――。

 そう考えたボクは、ジモンの秘めたる過剰性を電波に乗せるべく、2003年3月1日、TBSラジオ『スポーツBOMBER!』にて、メディア初公開「ジモン最強論」を本人の口から聞き出す場を設けた。

 この日、いつものトリオではなくピンでラジオ番組のゲストに呼ばれるという異常事態に、ジモンは、ラジオ局に到着した途端、ある奇行を見せた。

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 まず、ブースに入るなり、ひとり離れて、外窓と「金魚鉢」と呼ばれる防音密閉の強化ガラスを拳でコツコツと叩き、音を聞き比べたのだ。

 先述の『虎ノ門』での失態、シミュレーション番長疑惑を払拭するための行動なのだろうか。

 そして、その日のトークでは前置きなく、第一声から「本当の強さとは何か?」という命題にいきなり切り込んだ!

「いいかい、これ最初に言わせてくれる? この状況でもし、本当の最強を語るなら、まず、今、一番脱出しやすいポジションはどこかを把握すること。そして、もしもの場合、つまり有事の際、何をすべきなのか? ドアから出るのか、それともガラスを突き破るのか――そのような意識を日常生活の中で常に持ってなきゃダメなんだよ。それができていない奴は、決して強くはない!」

 おお! ツカミはOKだ!

 なるほど、それで本番前にスタジオの金魚鉢の厚さを確認していたわけか(と、一瞬、納得しかけたが、よく考えれば、ガラスを蹴破ったところで、ここは地上9階なのだが……)。

「あと、筋トレだけじゃダメなんだよ! 強くなるためには走ることも重要。オッ俺の場合、1ヶ月で200kmをノルマにして走っていたからね」

©杉山拓也/文藝春秋

 ネイチャーなジモンが、まさかアスファルトの上を走るとは想定外だった。

 しかし、その日、同席していた芸能界一の長距離ランナーとして知られる、そのまんま東から偶然、駒沢公園でジモンと遭遇した際の模様が語られた。

「たまたまなんだけど、こっちが先にジモンに気がついてさ。あっ! ジモンだ! って思って、しばらく見てたら、コイツ、藪の中の鳥や野良猫に立ち向かおうとしてるんだよ! 明らかに挙動不審でさー。しかも懐中電灯を持って走ってて、最初はノゾキでもしてるのかと思ってたんだよね」

 その証言に気色ばむジモン。

「ヒッ東さん、完全に誤解ですよ。オッ俺が持ち歩いているのは、懐中電灯じゃなくて攻撃光です! 動く動物相手に先制攻撃として、光を当てる特殊訓練をたまたま駒沢公園の周囲でしてたんですよ!」

 自らの証言によって、ある意味、ノゾキよりも遥かに変態的な行動を日課としていることを聴取者に印象付ける結果となった。

 そして、番組の最後に、ジモンは天高く吠えた。

「オッ俺は70歳で最強を目指している!! たとえ世界が滅亡しても、オッ俺だけは生き残るよ!!」

 以上の話に文章上のレトリックはあっても誇張は一切ない。

 大袈裟だと読者の諸君は思うだろうが、寺門ジモンとは、その発言を添加物なしに書き起こしただけでも、文字通り“強靭なる狂人”と形容することができるのだ。

 

 そして、2003年7月、「寺門ジモン最強伝説」を綴った拙著『お笑い 男の星座2』が出版された際に、本人から直々にお怒りのクレームが入った。

 

「博士ぇ! 本読んだんだけどぉー、あの書き方は全然ダメだよ!」

「ダメでしたか。ちょっと大袈裟に書き過ぎましたか?」

「そッそうじゃなくてさー」

「一応、全て裏を取って書いてるんですけど」

「チッ違うよォー。逆だよ。あんな控え目な表現で書いたら、読んだ連中が、まるでぇ、オッ俺が弱そうに思うじゃない!」

 

 ここまで来れば、ジモンは病的な虚言癖と思われても仕方がない。

 ならば、伝聞ではなく、自らの目で確認するしかないのだ!

寺門ジモン最強伝説2に続く

著者:水道橋博士 ©文藝春秋

※寺門ジモンエピソード登場の、水道橋博士さんと岡宗秀吾さんの対談を読めます

http://bunshun.jp/articles/-/6158

http://bunshun.jp/articles/-/6163

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