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大山悠輔が一瞬のスキを…阪神はなぜ、“完全無欠“の佐々木朗希を相手に勝つことができたのだろうか?

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/06/05
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 交流戦1カード目の西武戦を1勝2敗と負け越し。セ・リーグ首位を快走しながらも“過去の悪夢”が少しだけ頭をよぎったファンも少なくないのではないだろうか。

 しかし、6月4日の対ロッテ戦。難攻不落の佐々木朗希を攻略し、2対0で勝利を飾った試合を見て、「今年のタイガースは、やはり強い」と確信できた。

 同3日のロッテ戦を延長サヨナラで勝利し、交流戦の勝敗をタイに戻して迎えた昨日の試合。ロッテの先発は佐々木朗希。最速165キロを誇る、現役最強右腕のひとりだ。右手マメの影響での離脱はあったものの、ここまで4勝無敗。21歳の怪物右腕を前に、チームもファンも厳しい戦いになることは予想していたはずだ。

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最大の立役者は才木……それは間違いないが……

 大前提として、昨日の勝利の立役者が先発の才木浩人だったのは間違いない。9回をわずか101球、被安打3、奪三振12という投球内容は見事というほかない。「野球は点を取られなければ負けない」と言うが、まさにそれを体現した圧巻のピッチングだった。

才木浩人(左)と梅野隆太郎 ©時事通信社

 その上で、このコラムでは阪神打線がなぜ佐々木朗希を攻略できたのかを、改めて検証してみたい。

 「攻略」と言っても、結果は6回を投げた佐々木を相手に10三振。ヒットはわずか1本。奪った得点もわずか1点。決して「打ち崩した」わけではない。

 ただ、この1点を奪ったこと。そして、佐々木を6回でマウンドから引きずり下ろしたことが何よりも大きかった。

 この試合、タイガース打線は佐々木の前に5回までノーヒットに封じ込まれる。しかし、単に無策でアウトを献上したわけではない。

 たとえば1回裏。先頭の近本光司、2番・中野拓夢は連続三振に倒れたが、ふたりで計10球を佐々木に投げさせている。「早打ち」が代名詞の近本&中野だが、今季はしっかりとボールを見極め、ヒットだけでなく四球で出塁するケースが目立つようになった。結果として三振に倒れたものの、初回から「相手に球数を投げさせる」という1、2番の仕事を完遂して見せた。

 この意識は、打線全体にも感じられた。この試合、タイガース打線は佐々木を相手に4つの四球を選んだが、佐々木にとって1試合4四球は今季最多。チーム方針もあって毎回100球前後で降板する佐々木に対し、「球数を投げさせる」ことは最善にして唯一の策だ。ただ、圧倒的なボールを持ちながら制球力の高い佐々木を相手に、それを遂行することは至難の業。事実、佐々木が6回時点で球数100球に達したのは、今季初の出来事だった。昨日のタイガース打線は、パ・リーグ各球団が「やりたくてもやれなかった」ことを見事にやってのけたのだ。

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