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若手中継ぎ陣からあがった不満の声

 僕にとっては、言いづらいことです。ドラフト7位で巨人に拾ってもらって、球団には愛着も恩義もあります。「結果を残していないお前が言うな」と思った人もいたはずです。それでも口にした理由は、どうしても日本一になりたかったからです。

 2012年に先輩たちに引っ張られる形でいい思いをさせてもらって、今度は自分も貢献して日本一になりたい。そのためには、リリーフ陣が足りないと感じていました。

 球団の方からは「来年には変わるから」と言ってもらえました。ところが、翌2017年になっても何も変わらないどころか、むしろ悪化していました。その年の契約更改では2時間ほど時間をかけて、事細かく説明しました。球団からはまたも「来年には変わる」と言われましたが、2018年も状況は変わりませんでした。

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 若手からは不満の声もあがっていました。

「緊急登板で打たれて、2軍に落とされるのは納得がいかない」

「まったく肩をつくってないのはわかっているのだから、コーチがマウンドに行ってくれれば5球くらいは投げる時間がつくれるのに」

 球団に訴えると息巻く若手も何人かいました。僕らとしてはコーチ陣を批判したいわけではなく、日本一になるための提案をしたいだけです。それでも、こうした話をすれば「コーチ批判」ととらえられてしまう風潮がありました。

 若い選手にとって球団に直訴することは、将来の芽が摘まれる危険性も秘めています。かといって、山口さんや西村さんにそんなことを言わせるわけにはいかない。結局、中間管理職のような僕が意見を吸い上げて、球団に伝えることにしました。すでに球団とは何度も話をしていますし、「俺が泥を被ればいいか」と思ったのです。

 ただ、2年間での話し合いでもまったく変わらなかったので、今回は契約更改で「保留」という手を使わせてもらいました。「保留=球団批判」ととらえられるのを覚悟のうえで、少しでも世間の人に窮状を知ってもらいたかったのです。

 自分の行動が正しかったのか、悪かったのか、わかりません。でも、後悔はしていません。

 翌年の開幕当初はさすがに、中継ぎ陣に対して気を遣われている感じがありました。でも、その環境が最後まで保たれていたのかはわかりません。なぜなら、後半戦は僕が2軍暮らしだったからです。チームは5年ぶりにリーグ優勝に輝きました。

 そんな時、スポーツ報知が「陰の立役者」として僕の記事を出してくれました。ブルペンの改善を訴えたことが、優勝につながったという内容でした。僕はたとえ一人でもこう感じてくれた人がいるなら、言って正解だったなと報われた思いがしました。

 翌2020年、僕は1軍登板がないまま戦力外通告を受けて退団します。まだまだやれるつもりでしたが、体は31歳にしてボロボロでした。ヒザ、腰、足首に加えて、肩まで痛くなっていました。

 中継ぎ投手は失敗を許されないポジションです。そして、先発投手や野手と違って、失敗はその日のうちに取り戻せません。肉体と神経をすり減らして投げています。だからこそ、選手生命が短いのだと思います。

コーチとして痛感するブルペンを預かる難しさ

 現在、僕は沖データコンピュータ教育学院で投手コーチをしています。実際に投手を預かる立場になってみて、その難しさを痛感させられました。それでも、心に決めているのは「無責任なことは言わない」ということです。

 投球スタイルや性格を考えて、「攻めて投げろ」と指示して送り出した投手が打たれた場合。監督には「僕がこういう指示を出したので」と謝ります。選手の評価を落とすようなことは絶対にしたくないのです。最後は選手ではなく、自分が責任を取る。それが選手を生かす一番の方法だと思います。

 今の巨人リリーフ陣を見ていると、「ピースがハマってない」と感じてしまいます。一人ひとりの能力は高くても、相手打線からすると「また同じような投手が出てきた」と怖く感じてもらえないのかもしれません。2012年の巨人のようにピースがピタッとハマっている時は、僕のような能力がない投手でも結果を残せるのです。

 それでも、中川皓太も復帰して今後は上向いていくはずです。中川については、また別の機会に語らせてもらえたらと思います。

 中川のようなベテランの域に入ってきた投手が頑張り、若手が安心してついていけるような体制をつくれたら。そうすれば、巨人のブルペン陣はまだまだ戦えるはずです。

 そして、まぎれもない本音として、こんな思いも頭によぎってしまいます。

「今の巨人なら自分のような便利屋が生きるはずだよなぁ。もっとやれたかなぁ……」

 僕の思いは今も東京ドームのブルペンにあります。これからの巨人ブルペン陣の巻き返しを祈っています。

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