文春野球コラム読者のみなさん、お久しぶりです。以前、阪神タイガースとオリックス・バファローズでピッチャーをやっていた井川慶です。

 阪神タイガースが絶好調です。交流戦に入ってからは少しだけ勢いが落ち着いた気もしますが、まだまだセ・リーグ首位を快走中。最大の要因は“打線”だと思っています。そもそも、タイガースが強いときは“打てるとき”なんです。1985年はもちろん、私が所属した2003年、2005年も打線が強力でした。投手陣が安定していることは、変な話“当たり前”に近い。伝統的にピッチャーは良いので、あとは打線が機能してくれればおのずと強くなるんです。

 もちろん、村上頌樹投手、大竹耕太郎投手、才木浩人投手といった若い力の台頭は大きいと思います。もっというと、彼らが夏場にかかって少し疲れてきたタイミングで、おそらく青柳晃洋投手、西勇輝投手といった実績のあるピッチャーたちが出てくるはず。ふたりとも「1年間トータルで結果を残すピッチャー」なので、今は少し苦しんでいますが確実に調子を上げてきます。ペナントレースの行方は正直誰にもわかりませんが、阪神タイガースが最後までその中心にいるのは間違いないと思います。

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筆者・井川慶 ©時事通信社

取り巻くメディアの数は阪神タイガースが世界で一番?

 さて、今回はペナントの行方にも大きくかかわる交流戦を戦うセ・リーグ、パ・リーグの“違い”を少しだけお伝えしようと思います。私は1998年から2006年までセ・リーグの阪神タイガースで、2012年から2015年までパ・リーグのオリックス・バファローズでプレーしていました。ともに関西を本拠地とする球団でしたが、その環境はまったくの“別物”でした。

 一番わかりやすい違いが“メディアの多さ”です。タイガースは日本で一番、番記者が多いプロスポーツチームだと聞いたことがあります。いや、下手をすれば世界で一番かもしれません。細かな人数はわかりませんが、ニューヨーク・ヤンキースにいたころよりも周囲を取り巻く記者の数は多かった気がします。

 記者の数が多いということは、それだけ注目度も高いということ。試合中はもちろん、練習中や移動中もつねに周囲に人がいたり、もしくは知らないうちに写真を撮られる。自分が“雑談”だと思って話した一言が、次の日に大々的に報道される……。そんなことは日常茶飯事でした。だから、タイガースの選手は誰に教えられるわけでもなく、「人前で言っていいこと・ダメなこと」を勝手に学んでいきます。

 ちなみにバファローズは……少なくとも、私がいたころは「メディアの目」を気にしている選手はひとりもいませんでした(笑)。もちろん、記者の人はいますが、試合結果やそれにかかわるコメント以外が報道されることはまずありません。“雑談”が記事になるなんてことはありえないわけです。なので、記者に対しての警戒心もまったくありませんでした。